2015年2月8日(日)
介護報酬改定案
安上がり体制 加速
施設は大幅削減 利用者・労働者に しわよせ
介護保険サービスごとに事業者が受け取る4月からの報酬が6日、決定しました。特別養護老人ホーム(特養)など施設は大幅削減し、在宅サービスは加算を増やすなど、介護報酬の総額を抑えて安上がりの体制づくりを狙っています。
特養の基本報酬は介護報酬全体の改定率2・27%引き下げを大きく上回る6%削減。各種加算を加えても収入減となり、全国老人福祉施設協議会は、1施設あたり年額1500万円程度の減収、4人分の人件費に相当すると試算。「6割近くの施設が赤字に転落する」「介護難民」が増えると強調し、サービスや職員へのしわ寄せは避けられず、特養の増設にも逆行する内容です。
さらに特養の相部屋入居者にも、新たに月額1万4100円の部屋代を徴収し、負担増となります。
通所介護の小規模事業所は最大で9%削減。一方で、認知症加算、中重度者ケア体制加算が新設され、受け入れを促進します。
「訪問」「通所」も
24時間体制でヘルパーが1日複数回訪問する「定期巡回・随時対応サービス」や、通い・訪問・宿泊を組み合わせた「小規模多機能型居宅介護」は普及を図ります。他のサービスと併用した場合に、利用者の負担上限を超えないように見直します。
要支援者むけのサービスが4月以降、区市町村事業に移行するのを推進するため、訪問介護は約5%、通所介護は約20%それぞれ削減。各自治体が決めるサービス単価は、介護報酬が目安となるため、ボランティアなどを使った安上がりサービスを加速させることになります。
認知症対応を強化するといいながら、グループホームの基本報酬も6%近く削減します。宿直職員を多く配置した場合の報酬は増やされましたが、人員が少ない事業所への影響が指摘されています。
上乗せは限定的
介護職員の処遇改善は、月額平均1万2000円の賃上げになるよう上乗せ加算を設けます。しかし、基本報酬が大幅に下げられるなかで、労働者へのしわ寄せは避けられず、上乗せ加算をとれる事業所も限られるため、人員不足解消につながる保障はありません。
介護報酬が下がれば、一般的に利用者の自己負担も下がりますが、保険料は全国平均で5550円程度となり、約10%の大幅アップとなります。
6日の社会保障審議会介護給付費分科会では、委員から「基本報酬が下げられたことを危惧している。処遇改善に水をさす」「加算で埋め合わせるやり方は邪道だ」と、改定案への批判意見がでました。