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2015年2月7日(土)

「産経」が異様な報道

首相のお先棒担ぐ言論封じ

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 過激組織「イスラム国」の日本人人質事件への安倍政権の対応を冷静に検証しようとの声が高まるなか、「産経」が言論機関としては異様な報道をしています。

 同紙4日付は「『イスラム国寄り』?発言 野党・元官僚続々」と見出しを立て、安倍政権の対応について疑問や批判の目を向け、検証の必要性を指摘した論者を名指しで攻撃する記事を掲載しました。

首相の答弁引用

 なかでも同記事が目くじらを立てたのは、安倍晋三首相に対する日本共産党の小池晃副委員長の質問(3日)です。「(小池氏の)質問はISIL(イスラム国)に対し批判をしてはならないような印象を受ける。それはまさにテロリストに屈することになる」と述べた安倍晋三首相の答弁を引用し、小池質問を「イスラム国側に立った視点」として描きました。

 この小池氏の質問は、冒頭で「イスラム国」による日本人人質殺害を「残虐で卑劣なテロ行為」と糾弾し、国連安保理決議にそって国際社会が団結する必要を訴えました。その上で、2人の拘束を事前に認知していた首相のエジプト演説(1月17日)を取り上げ、人質に危険を及ぼす認識はなかったかと首相を問いました。これは政府の対応として今後の教訓を導くための冷静な検証を求める立場からのものです。

 首相はそれを「テロに屈する」のひと言で片付けたのでした。小池氏はこれに対し「テロに屈しない。そのひと言で懸念や批判に耳を貸さなくていいのか」と反論しました。

 この首相答弁について、西日本新聞が翌4日付で「異論封じ」の見出しで特集を組み、「『テロに屈しない』というスローガンを前に、正当な指摘や批判がかき消される恐れはないか」と疑問を向けました。

立場をゆがめる

 「産経」報道は西日本新聞とは全く逆。小池質問を「イスラム国側に立った視点」と攻撃し、首相と軌を一にして“異論封じ”を狙い、「イスラム国」の蛮行を糾弾している小池氏の立場を正反対にゆがめたのです。

 首相答弁について「毎日」特別編集委員の岸井成格氏がこうコメントしています。「政府の対応を論評することが、あたかも『イスラム国』とかテロリズムを利するように聞こえてしまう。そうだとすれば間違っている。政府が『イスラム国』へのリスクをどれだけ考えていたかは、大事なポイントだ。これからの日本のテロ対策に大きくかかわる」(TBSテレビ)。

 首相答弁に対する間違いの指摘ですが、これはそっくり「産経」報道にもあてはまります。

 悲劇を繰り返させないため政府の対応を検証しなければならないとき、首相が「テロに屈する」のひと言で“異論封じ”をはかる政権の対応をこそ、言論機関として問題視しなければならないはずです。それを逆に首相のお先棒を担いで、政府の対応の核心に迫る国会の言論を封じる「産経」。言論機関の自殺行為です。


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