2015年2月5日(木)
福島原発危険手当訴訟
労働条件改善一刻も早く
元作業員の原告 実名で不払い告発
東京電力福島第1原発での事故収束・廃炉作業に関わる作業員への危険手当不払いは、発注者の東電、大手ゼネコンなどの元請け、下請け企業による「共同不法行為」に当たるとして、同手当の支払いと損害賠償を求める訴訟の口頭弁論が4日、福島地裁いわき支部(杉浦正樹裁判長)で開かれました。
地裁支部
原告で作業員(当時)だった須藤一昭さん(66)が意見陳述に立ち、この日初めて実名を公表しました。須藤さんは「名前を公表すれば仕事がもらえなくなるのでは」と匿名できました。しかし1月に第1原発、第2原発で相次いで発生した死亡労災事故に衝撃をうけ「一刻も早く労働条件を改善しなければならないと考え、少しでも改善する力になりたいと実名陳述を決意した」と表明しました。
須藤さんは震災による原発の爆発から2カ月後の2011年5月26日から13年2月まで働いた第1原発構内での過酷な作業環境をあげ、「作業は常に被ばく事故と隣り合わせで、2年間で47ミリシーベルトを被ばく。一般人の50年分にあたる線量を浴び、健康不安は消えない」と告発しました。
須藤さんは「事故収束のためにがんばったことを誇りに思っている。機会があれば再び原発で働きたいと思っている」としたうえで、危険手当についての痛切な思いをこう訴えました。
「しかし危険手当は、元請けなどのピンはねで3千円しか回ってこなかった。これではベテラン作業員が去り、工具の名前もわからない経験不足の作業員ばかりでは今回のような死亡労災が後を絶たない。東電には税金が投入されているが、それがピンはねされてよいのか。この裁判でしっかり払われるようになり、作業員の意欲と質が高まり、事故収束作業が着実に進むようになることを願う」
報告集会で弁護団の広田次男団長は「この裁判のなかで東電の体質が赤裸々に出てきている。東電は危険手当を支払う、末端の作業員にまで届くようにすると言ったが、それは社会的に発言しただけだ。法的には意味が無いといわんばかりの態度に出ている。須藤さんの勇気ある力強い発言に多くの原発作業員は励まされている。今日も4人の作業員が第2次提訴に踏み切りました。この裁判で東電を大きな世論で包囲していこう」と呼びかけました。