2015年2月2日(月)
きょうの潮流
悲しみとともに心の底から憤りがわき起こります。これほど残虐で人の命をもてあそぶ行為が今の世にまかり通っていいのか。湯川遥菜さんにつづき、後藤健二さんまでもが…▼「戦争の犠牲者は女性であり、子どもたち」。フリージャーナリストだった後藤さんは、紛争地や困難な環境で苦しむ人たちの悲惨な現状を伝えてきました。危険と隣り合わせの取材や映像は“本当の平和”とは何かを問いかけます▼彼の著書に米軍の誤爆を受けたアフガニスタンの母子家族と少女を描いた児童書があります。長男を亡くし心に傷を負い、生活の糧を失った一家。そのなかで少しずつ笑顔を取り戻し、学校に通う10歳の少女。学ぼうとする子どもたちに希望が託されます▼空爆による住民らの被害はイラクやシリアでも。戦争によって国は壊され、爆撃におびえる日々。街も人心も荒廃し、憎しみの銃を手に取る若者たち。その姿と声を世界に発信した後藤さんは、日本人であるがゆえに「イスラム国」の蛮行にさらされました▼彼らは声明で安倍首相を指して宣言しました。「このナイフは健二を殺すだけでなく、おまえの国民がどこにいようとも虐殺をもたらすだろう。日本の悪夢が始まる」と▼得体(えたい)の知れない恐怖と不安。日本がテロの標的となったいま、国際社会の結束とともに、私たちが向き合うべきものは何か。米国の「対テロ戦争」という軍事介入の後についていくことが“本当の平和”をもたらすのか。後藤さんの死は突きつけています。