2015年2月1日(日)
パチンコATM設置
東和銀 「利便」と強弁
「客を深みにはめる」と批判されているパチンコ店内の銀行ATM(現金自動預払機)を設置している東和銀行(吉永国光頭取)が、このATM設置の理由について「顧客の利便」と強弁していることが31日、明らかになりました。同行が本紙に答えました。
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パチンコ店内ATMは大手IT関連企業の子会社である「トラストネットワークス」(東京都千代田区、竹村理会長)が2007年から設置を開始したもので、東和銀行はこれと提携し、自行のATMを供与しています。昨年11月現在で950台、全国のパチンコ店の1割近くまで設置が拡大しています。
2009年に本紙がこの問題を報道したのをきっかけに社会的批判が強まり、東和銀行は当時、この事業からの撤退を表明、約1年間にわたって事業がストップした経緯があります。
本紙が、ATM設置再開の理由をたずねたのにたいし、同行は「顧客利便性の観点から再開した」と回答しました。利用客の本来の「利便性」とはかけ離れた言い訳です。
トラスト社は10年に事業を再開するさい、パチンコ店内ATMに1カ月の引き出し限度額を15万円とするなど部分的な仕様変更を行い、「のめり込み」と呼ばれるパチンコ依存症拡大への「抑制機能」をつけたと主張しています。東和銀行はこれについて、「トラストネットワークスが『のめり込み防止策』を実施したことをふまえた」とのべ、トラスト社の主張をうのみに、ATM設置再開の口実にしています。
銀行ATMの設置は、かつては銀行の店舗とみなされ、旧大蔵省の認可を必要としました。1987年には設置数規制が無くなり、97年には機械化通達を廃止、店舗新設の内示制度も無くなりました。
金融庁の関係者は「どこにATMを設置するかは個別の金融機関の経営判断に委ねられているが、パチンコ屋(への設置)とは、銀行として最悪だ」と話しています。
東和銀行 群馬県前橋市に本店を置く第2地方銀行。群馬県や埼玉県を中心に東京都などにも店舗を展開しています。前頭取の「情実融資」などの問題で2007年10月、金融庁の業務改善命令を受けました。情報開示誌で「法令やルールの遵守はもちろん社会規範に反することのない公正で誠実な業務」をうたっています。
解説
社会的責任を逸脱
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銀行業界は1970年代にATMが導入されて以降、「顧客の利便性」を掲げて、ATM設置数の拡大や多機能化をすすめてきました。コンビニエンスストアや鉄道事業者との提携で、生活圏の近くにATMが設置されるようになったことは、利用客にとって便利な側面もあります。
しかし、パチンコ店内ATMは、これとはまったく違います。このATMは、日常の生活費の引き出しや必要な支払いなどという普通の用途は最初から想定していません。パチンコに負けた客が、カッとした頭で、その場でパチンコ資金を引き出すためのATMです。
トラスト社は自社のATMは「のめり込み」を防止する「抑制機能付」だと主張しています。しかし、そうした機能を追加しなければならないということ自体、このATMが利用客をパチンコ依存症に導きかねない危険性を持つものだと認めているようなものです。
1日3万円以内、1カ月15万円までという使用制限は、普通の人なら明らかに使い過ぎとなる金額で、歯止めともいえません。東和銀行がこれをATM設置拡大の「免罪符」のようにいうのは成り立ちません。
パチンコ店は、違法性の高い出玉景品の換金行為によって、多額の現金が動く「賭博場」です。そこにATMを設置すれば、多くの利用客を見込めるという発想自体が、銀行の社会的責任、「預金者保護」の観点からの逸脱といえます。
(竹腰将弘)