2015年1月26日(月)
「イスラム国」人質事件
際立つ残虐性と身勝手ぶり
犯罪許さぬ国際的包囲網を
過激組織「イスラム国」とみられる集団による湯川遥菜(はるな)さん、後藤健二さん2人の殺害警告は、湯川さんが24日までに殺害されたとみられ、厳しい局面に入りました。
「イスラム国」とみられる集団は欧米の民間人を誘拐し、自分たちの要求をインターネット上に突きつけ、受け入れなければ殺害し、遺体の映像を公開するという残虐な手口を繰り返してきました。確認されているだけで米国人2人、英国人2人、フランス人1人が殺害され、湯川さんは6人目の犠牲者です。
政府が確認した湯川さん殺害の動画では、後藤さんとみられる人物が持っている画像の右側には、ひざまずいた湯川さんの姿が写り、左側には斬首された遺体の写真が写っていました。
動画で流れた声明は「安倍首相が遥菜さんを殺した。警告を真剣に受け止めず、72時間以内に行動しなかった」と述べています。
しかし、日本政府は動画を確認して以来、2人の解放の条件である身代金について、明確に拒否した米英とは異なり、言明を避けてきました。その上で、外交ルートなどを通じて「イスラム国」との接触を図ろうとしてきたのも事実です。
声明はさらに、後藤さん解放の条件として、ヨルダンで収監中のサジダ・リシャウィ容疑者の釈放を求めています。
同死刑囚は、2005年にヨルダンの首都アンマンのホテルで発生し、60人が死亡したテロ事件の実行犯の一人で、「イスラム国」の前身である「イラクのアルカイダ」のメンバーだったとみられます。
声明は、リシャウィ死刑囚と、何の罪のない後藤さんとの交換を「公正だ」と述べていますが、これも一方的で、身勝手なものです。後藤さんの解放に全力をつくすと同時に、このような犯罪行為を許さない、国際的な包囲網が求められています。(カイロ=小泉大介、政治部=竹下岳、小玉純一、山田英明)