「しんぶん赤旗」
日本共産党
メール

申し込み記者募集・見学会主張とコラム電話相談キーワードPRグッズ
日本共産党しんぶん赤旗前頁に戻る

2015年1月22日(木)

オバマ米大統領一般教書演説

中間層支援強める姿勢

キューバ正常化に意欲 ■ 対「イスラム国」強化

このエントリーをはてなブックマークに追加 Yahoo!ブックマークに登録 mixiチェック

 【ワシントン=島田峰隆】オバマ米大統領は20日夜、上下両院合同会議で今年の施政方針を示す一般教書演説を行いました。オバマ氏は「中間層を支援する経済が機能している」と語り、企業の課税逃れ防止や富裕層増税などに取り組み、中間層支援をいっそう強める姿勢を示しました。


 オバマ氏は、この間の経済成長や財政赤字の縮小、失業率の低下などを“実績”として挙げました。今後の方向として「少数の人々だけが成功する経済か、収入を引き上げ、努力するすべての人に機会を与える経済か」が問われているとしました。

 そのうえで「審判は明確だ。機会を拡大する経済が機能している」と指摘。特に企業の課税逃れに触れ、「税の抜け穴をふさぎ、海外に利益を置く企業でなく米国に投資する企業に報酬を与えよう」と述べました。また収入の上位1%の課税逃れを許していることが不平等を広げているとし、富裕層に税負担を求め、その収入を中間層の子育て支援策などにあてる方針を示しました。

 このほか、最低賃金の引き上げ、有給の病気休暇の拡充、コミュニティー・カレッジ(公立2年生大学)の学費無償化、インフラ整備などを訴えました。

 外交面では、昨年12月に発表したキューバとの国交正常化交渉については「われわれのやっていること(キューバ孤立策)が50年間機能しないのなら新しいことに取り組むときだ。キューバ政策の変更は西半球での不信の遺産を終わらせる可能性を持っている」と語り、国交正常化への意欲を表明。対キューバ経済封鎖の中止を認めるよう議会に求めました。

 イラクやシリアで勢力を広げる過激組織「イスラム国」とのたたかいを強調。「アラブ諸国を含む幅広い連合を率いて、最終的に打ち負かす」と述べました。

 米国の指導力を発揮するうえで「軍事力を強力な外交と結びつける」とし、テロとのたたかいでは「一方的に行動する権利を留保する」とも表明しました。また対「イスラム国」での武力行使に関する新権限を付与するよう議会に呼び掛けました。

解説

異常な格差 是正求める世論

 オバマ米大統領が一般教書演説で「中間層を支援する経済」を強調し、引き続き富裕層増税と中間層の強化、最低賃金の引き上げなどを打ち出したのは、国内の異常な貧富の格差や、その是正を求める国民世論を背景にしたものです。

 昨年11月の中間選挙で、野党・共和党が連邦議会の上下両院とも過半数を占め、政権主導の政策実現が困難な状況で、オバマ氏が何を言うのか注目されていました。

 大企業の意向を強く受けた共和党に傾くことなく、オバマ氏が従来の立場で政策提案した背景には、格差が解消されていないこと、生み出された富が富裕層でとどまっていることにあります。

 米CNNテレビのウェブサイト20日付によると、米国の上位20%の富裕層はこの30年間で富を2倍近く増やしましたが、40%を占める中間層の増やした富は13%にも至らず、残りの下位40%は富を減らしています。

 米シンクタンク「デモス」は20日、ウェブサイトで「オバマ氏の税制計画はなぜ重要か」と題して、最も所得の低い20%の層が、州・地方自治体に所得税を10・9%払っているのに対し、上位1%の富裕層は5・4%しか払っていないことを示し、税制の不公平さを指摘しています。

 貧困に苦しむ国民の世論と運動もオバマ政権に影響を与えています。富裕層増税も最低賃金引き上げも、党派を超えて国民の多数が支持。ペレス労働長官らは、労働運動が政策実現に重要だと繰り返し述べています。

 ホワイトハウス上級顧問のダン・フェイファー氏は18日放送のニュース番組で、オバマ氏の提案する経済政策と、共和党が主張する富裕層優先のトリクルダウン理論の経済政策との論争になるだろうと語りました。

 オバマ氏の演説を契機に、経済路線をめぐる国民的な議論と運動がさらに高まり、2016年の大統領選挙の大きな争点にまで及ぶ可能性もあります。

 (ワシントン=洞口昇幸)


見本紙 購読 ページの上にもどる
日本共産党 (c)日本共産党中央委員会 ご利用にあたって