2015年1月22日(木)
マクロ経済スライド改悪
物価上がっても下がっても
“年金自動削減システム”
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厚労省が21日、年金支給額の伸びを物価上昇より低く抑える仕組みの「マクロ経済スライド」について、物価が下がるデフレ下でも実施できるように改悪することを審議会に示しました。これが実施されれば、向こう30年間にわたって年金受給額を下げ続けることが可能になる大改悪です。
年金は物価(賃金)に合わせて改定されます。かつては物価が3%上がると年金も3%上がっていました。
しかし、自公政権が2004年、「100年安心の年金」といって「マクロ経済スライド」を導入。物価・賃金が上がっても年金の引き上げを抑制し、実質削減・目減りする仕組みをつくりました。
保険料を負担する労働力人口の減少と、平均余命の伸びにあわせて「調整率」を設定。物価・賃金上昇率から「調整率」を引いた分しか年金を上げない仕組みで、いわば“年金自動削減システム”です。
しかし、これまでデフレが長年続くなどしたため実施できませんでした。それがアベノミクスによる物価上昇によって発動できるようになり、2015年度から発動することになっています。物価は2・8%も上がっているのに、過去の物価下落時に下げてこなかった分と合わせて改定率は1%に抑えこまれます。
もともとこの仕組みには、「名目年金額」そのものは引き下げないという「歯止め」があり、物価が下落するもとでは発動できませんでした。政府は、「高齢者の生活の安定にも配慮して、名目額を下限とし、年金額を前年度の額よりも引き下げることはしない」(坂口力厚労相、04年4月1日)と明言していました。
ところが、今回の提案は、その「歯止め」についても廃止し、賃金・物価が下がっても年金額を引き下げることを可能にします。
例えば物価が0・5%下がった場合、「マクロ経済スライド」による削減率(調整率)を1%とすれば、年金額は1・5%も削減されることになります。
この結果、基礎年金は、高成長の場合でも、所得代替率(現役世代の賃金に対する年金額の割合)が36・8%から26%へと3割もダウン。厚生年金と合わせても62・7%から51・0%へと2割もカットされてしまうのです。低成長の場合は44・5%まで下がり、50%を確保するという政府の公約も守ることができません。
安倍内閣は現在、過去の物価下落時に年金を下げてこなかったとして、2015年4月分まで3度にわたって計2・5%、1兆3000億円の年金削減を実施中です。この上、「マクロ経済スライド」を改悪すれば、物価が上がっても年金はほとんど上がらないか下がることにもなり、年金生活者に深刻な打撃を与えます。現役世代にも年金不信をいっそう広げ、年金制度の基盤を掘り崩すことにしかなりません。
(深山直人)