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2015年1月6日(火)

2015 とくほう・特報

安倍自民党と新改憲団体

国民投票に照準 「草の根」から改憲策動

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 安倍晋三首相は通常国会で、集団的自衛権行使容認の閣議決定の法制化を狙うとともに、憲法条文を変える明文改憲を「歴史的チャレンジ(挑戦)」と呼んで執念を見せています。これと歩調を合わせ、改憲勢力が新たな全国組織をつくり運動を強めようとしています。その動向や狙いを探りました。 (特報チーム)


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(写真)改憲組織「美しい日本の憲法をつくる国民の会」のパンフレット(右上)、リーフレットと賛同署名用紙(左上、裏に署名欄)

 安倍首相は12月24日、第3次政権発足直後の記者会見で、憲法「改正」について聞かれ、「3分の2の多数を衆院、参院でそれぞれ構成する必要がある」とのべるとともに、「大切なことは、発議されれば国民投票になる。この投票で過半数の支持を得なければならない。ここが一番大切な舞台。どういう条文から国民投票をするか、またその必要性について国民の理解をまず深める努力をしたい」と、国民投票のやり方まで踏み込んだ発言をしました。

 「読売」調査(昨年3月15日付)でも憲法「改正」賛成が42%と1年前調査から9ポイントも下がり、9条「改正」賛成が30%しかないなかで、国民投票に照準をあて「国民の理解を深める」ことに力を入れるという表明です。

「九条の会」に対抗

 渡辺治一橋大学名誉教授(九条の会事務局)は「新たな改憲組織『美しい日本の憲法をつくる国民の会』、その中心にいる日本会議もそうですが、みんな地方・地域の組織を重視しています。彼らが改憲がすすまなかった原因と考えているのが九条の会の運動です。地方・地域でこれに対抗するだけでなく、最終的には国民投票でいこうとしている。国民の中にある平和主義への同調をそう簡単には変えられないと思っているのです」と指摘します。

 国政・国会での安倍自民党の動きと、地方・地域での運動との二人三脚で改憲運動を前にすすめる―。

 「美しい日本の憲法をつくる国民の会」は、その担い手として総選挙前の10月1日に結成されました。右翼改憲団体の総本山・日本会議の三好達会長が「国民の会」共同代表(3人)、椛島(かばしま)有三事務総長が同事務局長になるなど、日本会議系列の運動組織です。

 この会は「平成28年(=2016年)7月に実施される予定の参議院選挙で、『憲法改正国民投票』の実現と、過半数の賛成による憲法改正の成立をめざ」すと目的を明示しています。首相発言と軌を一にしています。

 そのために、1000万人の賛同者署名の拡大、早期実現の国会議員の署名や地方議会決議の推進、全県に「県民の会」をつくるとしています。改憲内容を紹介するパンフ、リーフレット、賛同署名用紙、ポスターなどを作製し傘下の団体に配布し、「草の根」の運動をよびかけています。

 地方議会での「憲法改正早期実現」意見書はすでに24府県議会、25市町村議会で可決されています。

 共同代表の一人、櫻井よしこ氏(ジャーナリスト)が『週刊新潮』1月1・8日号で安倍首相と対談。そのなかで「総理はかねてより、『自分の歴史的使命は憲法改正だ』と述べてこられた」「私たちは『国民の会』を設立し、2016年の参院選の頃に試案を提示しようといっている」と水を向けます。首相は、時期は明示できる状態ではないといいながら「国民投票によって否決されたら一巻の終わりになる。そうならないように国民的な議論を深めていく必要がある」と並々ならぬ構えを見せました。

議連が押し上げ

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 改憲団体の動向にくわしい俵義文氏(子どもと教科書全国ネット21事務局長)は「安倍内閣のタカ派度・極右度が“来るところまで来た”といえるほど際立っています。一度政権を投げ出した安倍晋三氏が政権に復帰することができたのは、反人権・反憲法、歴史修正主義の議員連盟に支えられたからです。第2次政権に至る自民党総裁選のときに、地方票で上回っていた石破茂氏を議員票で逆転したのは、それら議連の押し上げがあったためです」といいます。

 俵氏はそうした議連に、日本会議国会議員懇談会、日本の前途と歴史教育を考える議員の会、神道政治連盟国会議員懇談会、みんなで靖国神社に参拝する議員の会、創生「日本」(安倍首相を会長とする超党派の議連)などをあげます。

 「内閣の大臣19人のうち日本会議議連が16人、神道議連が18人など8割、9割を占めます。首相自身が日本会議議連の特別顧問、神道議連の会長を務めています」と指摘します。

 これらの議連は日本会議(東京都目黒区)と、全国の神社を傘下に置く神社本庁系列の政治団体・神道政治連盟(同渋谷区)などを協賛し、選挙になれば支援を受けて活動しています。

 さらに櫻井氏が理事長を務める「国家基本問題研究所」(同千代田区)は、外交・安保問題で研究会や講演会を開き、日本軍「慰安婦」問題の「河野談話」を攻撃する新聞意見広告をだすなどしています。

 これらの改憲団体が「美しい日本の憲法をつくる国民の会」の中心に座っています。

国民意識との矛盾

 国民投票に照準をすえたこうした改憲運動は、彼らの思惑通りにすすむのか―。

 1969年結成の古い改憲団体の一つ、神道政治連盟と密接な関係にある「神社新報」はその論説(昨年10月13日付)で「神政連は、この『国民の会』と『県民の会』の中核となって、これから全力を挙げて国民運動を展開していかねばならない」といい、「各神社においては、氏子や崇敬者の組織を動かし」賛同者の拡大を、と訴えています。

 しかし、関西地方の神社関係者の一人は「私たちのところではあまりそういう話は聞きません。総選挙のときに神社系列で推薦候補というのがきていますが…。私の世代は戦後の民主主義の中で育っているから、戦争をしないことはとても大事なことです。そうした多くの国民の願いを無視するようなことはしてほしくない」といいます。

 渡辺氏は「改憲勢力にとって、まず閣議決定の法制化という解釈改憲をすすめることが、アメリカの要請にも応える焦眉の課題ですが、安倍首相やタカ派による明文改憲の言説は国民の懸念を増しています」と述べ、改憲派内の矛盾をこう指摘します。

 「衆院東京12区で極右改憲派の田母神俊雄候補(「次世代」副代表)が最下位落選でした。世論調査に見るように、国民のなかには戦前の日本のあり方への反発は根強いものがあります。一方、安倍首相の原動力・エネルギーは明文改憲派、『靖国派』です。この人たちを排除すると改憲運動を盛り上げることができない。平和を志向する国民の意識を突破しなければならないのですが、その馬力を担うのは主権者の国民をないがしろにする人たちです。ここに彼らの運動の矛盾、弱点があると思います」


 日本会議 「新憲法制定」や戦争犯罪人を裁いた東京裁判否定などを掲げる改憲右翼団体。1997年に右翼組織「日本を守る国民会議」と宗教系右翼組織「日本を守る会」を統合して結成。副会長に神社本庁総長、代表委員に靖国神社宮司、神道政治連盟会長も。同会議に呼応して「日本会議国会議員懇談会」、地方議員連盟があります。

 神道政治連盟 「皇室の尊厳護持運動を活動の第一」に掲げ天皇中心の「建国の精神」に立った国をめざす改憲右翼組織。神社本庁を中心に1969年に結成。70年に同連盟に呼応して神道政治連盟国会議員懇談会が結成され、安倍首相は議員になってからその要職をつとめています。


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