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2015年1月1日(木)

2015 焦点・論点

シリーズ 被爆70年 核兵器のない世界を

国連軍縮問題担当上級代表 アンゲラ・ケイン さん

核兵器の非人道性 決定的な影響 広島での署名を集める姿に感銘

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 広島・長崎の被爆から70年となる今年、ニューヨークでは4〜5月にかけて、核不拡散条約(NPT)再検討会議が開かれます。核兵器廃絶をめぐる状況や会議の焦点について、アンゲラ・ケイン国連軍縮問題担当上級代表に聞きました。

 (ニューヨーク=島田峰隆)


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(写真)アンゲラ・ケイン ドイツ生まれ。2012年3月から国連軍縮問題担当上級代表。政治担当の事務次長補、政治局や広報局の局長を歴任した後、08年から12年まで、人事や財政、機構改革など国連の運営全般を担当する事務次長(管理局長)を務めました。1982年の第2回国連軍縮特別総会で決議された「世界軍縮キャンペーン」の活動に関わるなど平和・軍縮問題に長年携わってきました。
 (撮影・島田峰隆)

 1945年の国連発足のすぐ後に、新たな核保有国が現れたことは懸念される出来事でした。冷戦時、特にその最高潮の時には7万から7万5千発もあった核兵器は、今は1万6千から1万9千発に減っています。

 ただ率直に言って、この数は多すぎます。核兵器はいっさい持つべきではありません。NPTは原子力の平和利用を管理するだけではなく、核兵器を廃絶する条約であり、それが第6条です。

NPT体制有効

 NPT体制は核拡散防止に役立ってきたし、成功しているメカニズムといえます。

 しかし第6条に基づく核軍縮・撤廃の約束が果たされていない。この点によりはっきりと焦点を当てる必要があります。

 核兵器を持たない国々は、核軍縮が進んでいないと失望の声を上げています。市民社会も、この状況が続くことは許されない、核保有国は核兵器を廃絶するべきだと、強く主張しています。私たちは今年のNPT再検討会議を、核兵器廃絶を求める圧力がいよいよ強まるなかで迎えることになります。

 最近、特に強まっているのが、核兵器の問題を人道的な影響の側面からとらえる声です。

 これまで「核兵器の人道上の影響に関する国際会議」がノルウェー(2013年3月)、メキシコ(14年2月)、オーストリア(14年12月)と3回開かれました。ノルウェーで約120カ国だった参加国は、オーストリアでは約160カ国になっています。これは国連加盟国の4分の3以上であり、極めて目立った増加といえます。国連総会では、ますます多くの国がこの会議の趣旨の決議に賛同しています。

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(写真)ウィーン大学で開かれた「原爆と人間」展を訪れた人たち=2014年12月10日(島崎桂撮影)

被爆体験を証言

 オーストリアでの会議で重要だったのは、核兵器国5カ国(米英仏中ロ)から2カ国、米国と英国が参加したことです。会議ではカナダ在住のサーロー節子さんが広島での被爆体験を証言し、核実験被害にあった人々も健康や環境への影響を語りました。こうした証言が、核兵器を違法なものにしようという各国や市民社会の要求を強める力になっています。

 過去3回の国際会議が積み重ねてきた成果は、今年のNPT会議に決定的に強烈な影響を与えると確信します。

 被爆から70年にあたる年のNPT再検討会議で、核兵器国がこうした声にどうこたえるのか。その点を見ることが重要です。もちろん核兵器国5カ国以外の核保有国、インド、パキスタン、イスラエル、北朝鮮というNPT外の国々の対応にも注目しなければなりません。

市民社会の支持

 2010年の再検討会議は64項目の行動計画をまとめました。核兵器国に対しては、行動計画のどこを実践したのか、どこをこれから実践しようとするのかを明確にして再検討会議に参加することを希望します。

 核兵器を禁止する国際条約を求める声が強まり、特に非同盟諸国からは具体的な提案が出ています。市民社会からの強力な支持もあります。

 一方で認識しなければならないのは、条約ができても、仮に核保有国が署名しないならば、前進しないわけです。核保有国に条約の考えに賛同させ、その中身を実施させる必要があります。

 核保有国の参加が得られないかもしれないものを結ぶよりは、核保有国を関与させたり、彼らと協議しようとしたり、何ができるか考えたりするほうが、より良いとの考え方も根強くあります。

 核保有国は核抑止力論を主張していますが、私の回答は、それは再考する必要があるし、変更されなければならない、ということです。

 北大西洋条約機構(NATO)加盟国の多くは核抑止を軍事政策に取り込んでいます。核の傘のもとにある国も多くあります。彼らは核兵器国による“保護”から利益を得ているというわけです。

 しかしそれは持続可能ではありません。「ええ、私たちは核兵器を持っています。持ち続けます」と言う主張は、“それならこちらも核兵器を持ったほうがいいかもしれない”という考えを広げます。結局、抑止というのは神話です。私は、どの国もその方向に進まないことを強く希望します。

 世界の人々や環境をむちゃくちゃに破壊し、筆舌に尽くしがたい苦しみを与える必要はありません。

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(写真)「第3回核兵器の人道上の影響に関する国際会議」で発言する日本原水爆被害者団体協議会の田中熙巳(てるみ)事務局長(スクリーン右)=2014年12月9日、ウィーン(島崎桂撮影)

多くの人が署名

 昨年、広島を訪れた際、若い人たちが熱心に署名を集める姿に感銘を受けました。署名に応じる人の数の多さも印象的でした。広島の通りで暑い中、容易ではない活動に取り組んでいる。彼らの献身的な姿にたいへん感激しました。

 日本には、核兵器に反対するもっとも活発な動きがあり、それは他の国とは比較できないようなものです。

 1970年代終わりから80年代初めにニューヨークでは、大規模な反核デモ行進がありました。こうした行進は核兵器について人々を考えさせることになります。核兵器について、目には見えないけれど明確で現実の危険がいつもあるということを人々に伝えていかなければなりません。核兵器に反対する人々の怒りの声をさらに目撃したいと思います。


 NPT第6条 核保有国の軍縮努力を明示した条項。「全面的かつ完全な核軍縮(軍備撤廃)に関する条約交渉を誠実におこなう」ことを義務付けています。2010年のNPT再検討会議では、「核兵器のない世界」に向け、「必要な枠組みを確立する特別な取り組みをおこなう」ことを確認。核兵器禁止条約の国際交渉に道を開く方向を打ち出しました。


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