2014年12月30日(火)
生活保護費
大阪市がプリペイドカードで支給
受給者の権利を侵害
大阪市がカード会社と提携し、生活保護費の一部をプリペイドカードで支給する全国初のモデル事業を始めると発表し、波紋を広げています。橋下徹市長は26日の発表会見で「本来、全員カード利用にして記録を全部出させ、ケースワーカーが指導すればいい」などと発言しています。
市は、家計・金銭管理が必要な受給者への支援に資すると強調しますが、専門家からは「受給者の権利侵害だ」との指摘が出ています。
カードで支給するのは、食費や水光熱費など日常生活にあてる生活扶助費の一部、月3万円です。市と協定を結んだ三井住友カード発行のカードを用い、市が毎月入金。受給者がVISA加盟店で買い物する仕組みです。
市は、2015年2月ごろから利用希望者を募り、半年から1年程度モデル実施。効果を検証し、16年度からの本格実施をめざす考えです。特定業種に対する使用制限や、1日当たりの利用限度額を設定することも想定しています。
橋下市長の発言について、自治体情報政策研究所の黒田充代表は「受給者本人が保護費の使い道を決めるという憲法上の権利を侵すものだ。大阪市単独の動きではなく、生活保護費の抑制を狙う国の大きな流れの一環ではないか」と指摘します。
全大阪生活と健康を守る会連合会(大生連)の大口耕吉郎会長は「受給者にとって何の利益にもならない。社会福祉士の資格を持った正規職員を増やし、一人ひとりに寄り添った、きめ細かな指導ができる体制の整備こそ必要だ」と述べています。大生連は、市に対し事業の中止を要請していくとしています。