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2014年12月30日(火)

主張

STAP論文不正

成果主義・競争主義をただせ

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 理化学研究所の外部有識者の調査委員会が、「STAP論文は、ほぼすべて否定された」とする報告書を発表しました。理研の検証実験でもSTAP細胞は再現できませんでした。「新たな万能細胞の発見」として注目されたSTAP細胞は根底から否定されました。

研究の基盤が崩壊

 報告書は、遺伝子解析により、STAP細胞から作ったとされる細胞が、いずれも別の万能細胞であるES細胞から作られたことを明らかにしました。新たに2件のデータねつ造を認定したほか、小保方晴子氏の実験記録やオリジナルデータがほとんど存在せず、過失も非常に多いなど「『責任ある研究』の基盤が崩壊している」ことを厳しく指摘しました。

 このような重大な欠陥をもつSTAP論文が大々的に発表されたのはなぜか。報告書は、「見ただけで疑念が湧く図表」や「明らかに怪しいデータ」があるのに、共同研究者が「疑念を追求する実験を行わなかった」ことをあげ、「特許や研究費獲得や著名雑誌への論文掲載」に夢中になって「研究の中身への注意がおろそかになった」可能性を指摘しています。

 理研の「研究不正再発防止のための改革委員会」提言書(6月)も、不正の背景に「iPS細胞研究を凌駕(りょうが)する画期的な成果を獲得したいとの理研CDBの強い動機があった」としていました。成果至上主義が、科学研究への国民の信頼を崩壊させかねない事態を招いたといわなければなりません。

 報告書は、研究者倫理の基礎となるのは、「論文のインパクトファクターでも、獲得研究費の額でも、ノーベル賞の獲得数でもなく、自然の謎を解き明かす喜びと社会に対する貢献である」と強調しています。科学研究の原点に立ち返ることが求められます。

 こうした成果至上主義が、政府のすすめた過度に競争的な政策によって顕著になっていることを直視する必要があります。不正事例は、小泉純一郎内閣が競争的資金の重点配分や任期制など競争的政策を強めた2001年ごろから今日に至るまで急増しています。

 安倍晋三内閣は大学の基盤的研究費を大幅に削減する一方で、「イノベーション創出力の強化」だとして一握りの「スーパーグローバル大学」に巨額の競争的資金を投入するなど「重点支援を通して大学の競争を活性化する」(産業競争力会議)としています。こうした競争強化策は、不正の根絶にも研究の発展にも逆行するものです。

 一部の研究機関への競争的資金の集中は、健全な研究者養成の障害にもなっています。論文や特許などの成果を早く出すことが至上命令になり、大学院生や若手研究者がじっくり考え、研究者としての能力を磨く機会が失われていきます。STAP論文の不正もこうしたなかで起こったものです。

科学研究の健全な発展を

 日本学術会議も、「競争的資金さえ拡充すれば世界的な研究成果が生まれるはず」というのは「誤った認識」だと指摘します(『日本の展望―学術からの提言2010』)。

 不正をなくし科学研究の健全な発展を支えるためには、研究者倫理の確立、大学院教育の充実とともに、成果主義・競争主義をただし、基盤的な研究費の十分な確保や任期付でない安定した雇用を保障することが急務です。


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