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2014年12月28日(日)

国保料上げ徴収強める

都道府県への運営移管

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 安倍政権は、国民健康保険の運営を市町村から都道府県に移す計画を進めています。国保料(税)が高すぎて払えない人が相次ぐなか、抜本改革となるのか―。(松田大地)


高すぎて払えず差し押さえ多発

写真

(写真)市による差し押さえで預金ゼロになった男性の通帳コピー

 農機具の製造会社に勤めていた男性(61)=前橋市=は、病気で仕事を退職後、10年間ほど国保税などが払えずにいました。国保証は取りあげられ、医療費が全額負担の資格証になり、滞納額は計90万円に。今月15日、預金口座に振り込まれた2カ月分の国民年金16万3699円から生活費1万5000円を引き出したその日のうちに、残りの年金すべてを市に差し押さえられました。口座の残金はゼロです。

滞納世帯は2割

 「何の状況も聞かず、病人の年金を取りあげるなんてやめてほしい。国保料は高すぎて、払うのは大変だ」と男性は訴えます。

 前橋市による差し押さえの事例は、11月に「市税を考える市民の会」や各県の社会保障推進協議会が共催した学習会でも多数報告されました。銀行口座に入っている年金や児童扶養手当を狙い撃ちし、生活保護の受給者からも取り立てるきわめて無法で強引なものです。

 滞納世帯は全国で約2割にものぼります。国庫支出金の割合が50%から半減され、国保料は平均3・9万円から9万円(2012年度)へと2倍以上も上がりました。

図:国保運営都道府県移管(イメージ図)

 安倍政権が狙う新制度では、都道府県が医療費実績などをもとに市町村ごとに保険料額(分賦金)を割り当て、市町村が徴収して都道府県に納めます。市町村が負担軽減のために行う国保への繰り入れはなくすため、医療費や所得水準が高い市町村では保険料が引き上げられることになります。

 市町村が医療費を削減すれば分賦金は低くなり、都道府県が示す目標より高い収納率をあげれば保険料率は低くなるため、市町村は医療費削減や保険料の徴収強化に駆り立てられます。国保料の負担上限の引き上げや、建設国保など同業者でつくる国保組合への国庫補助削減も計画されています。

 22日の経済財政諮問会議では、経団連などが、市町村や住民による医療費削減に応じて国庫支出を増減する仕組みまで求めました。

審議会で懸念も

 厚生労働省の審議会では「医療費は個人の責任で払えと、格差問題になる」(全国町村会)「収入がない方に強制的に徴収するのはなかなかできない」(日本医師会)と懸念の意見が出ています。

 一方、国が8%への消費税増税で国保の財政安定化に使うとしていた1700億円や追加公費の投入は未定のまま。全国知事会は「被保険者の負担が限界に近づいている」「抜本的な財政基盤の強化が必要だ」と主張し、国が財政責任を果たすよう求めています。

 「法律で社会保障と定められた国保制度を医療費抑制システムに変質させることが安倍政権の狙いです」と話すのは、中央社会保障推進協議会の山口一秀事務局長です。「低所得者の受診抑制につながり、お金のある人だけの医療に変えられてしまう。国庫負担の引き上げと、誰もが安心してかかれる医療制度の拡充こそ求められています」と語ります。


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