2014年12月26日(金)
主張
「自然増削減」予算
どこまで痛みを強いるのか
安倍晋三政権が2015年度予算編成のなかで、社会保障費の「自然増」を「聖域なく」見直すとして、大幅削減を行うことを繰り返し表明しています。社会保障費の「自然増」は、高齢者の人口が増えることにともない必要になる年金、医療・介護などの費用の増加分のことです。高齢者が増える社会では増額が避けられないお金です。それを「聖域なく」と無理やり削り込むことは、国民の暮らしと安心の土台を危機にさらす、きわめて乱暴なやり方です。
社会保障の根幹を壊す
財務省の財政制度等審議会が25日に決めた15年度予算編成に向けた建議は、医療・介護費の「自然増」の半分に切り込むことを強く要求しました。国民の批判が広がっている介護報酬「6%」削減方針も盛り込み、断固実行の構えです。
財務省が、削減対象に具体的に列挙しているのは、医療・介護分野にとどまらず、生活保護、障害者福祉などあらゆる分野です。年金支給額の削減にも踏み込む姿勢です。「抑制策の総ざらい」という異常な様相です。
政府は、「財政危機」をもたらした責任を社会保障費の増大にばかり求めますが、事実をゆがめた言い分です。大企業や大金持ちにたいする大幅減税の積み重ねによる税収減、「景気対策」を名目に行われた大型公共事業による支出増の影響などはどうだったのか。それらについてまともな検討もなく「社会保障」を“やり玉”にあげる姿勢は間違いです。
しかも日本の社会保障費は、国内総生産(GDP)比で約20%で、フランスなど欧州諸国と比べて低い水準です。世界でも少ない社会保障費によって、世界でトップクラスの高齢化社会を支えているのが日本の実態なのです。そんななか、社会保障の「自然増」の削減・圧縮に容赦なく突き進んだら、日本の社会保障制度はまともな機能が果たせなくなるのは必至です。
かつて自民・公明の小泉純一郎政権時代に「自然増」を毎年2200億円も機械的に削減する方針を実行したことで「医療崩壊」「介護難民」の深刻な事態を引きおこしたことを忘れたとでもいうのか。
厚生労働省幹部OBからも、手当たり次第の削減策に「小手先の財政対策が『アリの一穴』となって、わが国の社会保障制度の崩壊を招くのではないか」と警告の声も上がっています。大義も道理もない「自然増」削減方針は撤回すべきです。
「財政危機」といいながら安倍政権は、大企業向けの法人税減税などは15年度から確実に実行する構えです。予算編成方針では、軍事費についても増額させる方向で検討がすすんでいます。こちらの「聖域」にこそ徹底的に切り込むべきではないのか。政治の姿勢が根本から問われています。
大企業優先の転換を
総選挙直後、安倍首相と面会した財界団体代表が社会保障などについて「一部の人にとって苦い薬となる施策を実行できるのは安定的な安倍政権しかない」と要請し、首相も前向きに応じたといいます。異常としかいいようがありません。
すでに経済政策「アベノミクス」と消費税増税によって、どれだけ国民が「苦い薬」を飲まされているか。国民の暮らしなど眼中にない大企業・財界最優先の政治からの転換は急務です。