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2014年12月24日(水)

どう見る 大学入試「改革」案

競争主義に拍車の危険 教育現場「負担と混乱招く」の声も

中央教育審議会が答申

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 中央教育審議会が22日に答申した大学入試「改革」案。競争主義的な制度を抜本的に是正するものなのか。


放置できぬ現状

 日本の大学入試は、大学や学部学科ごとに選抜が行われるという世界に例のないような競争主義的な制度となっています。多くの大学が活用する「センター試験」は、短時間で多数の選択問題をこなし、その点数だけで合否が決まります。

 受験科目が少なくてすむ場合は、それ以外の科目は早くから勉強しなくなるなど、高校教育をゆがめる方向に作用しています。

 答申も「知識の暗記・再生に偏り、真の『学力』が十分に評価されていない」と指摘。2種類の新しいテストを打ち出しました。

 センター試験に代わる「大学入学希望者学力評価テスト」は、年複数回の実施。「教科型」の設問だけでなく、複数の教科を組み合わせた「総合型」を導入します。成績は「一点刻み」から「段階別」表示とし、英語では「書く」「話す」も重視するとして「英検」「TOEFL(トーフル)」など民間試験を活用します。

 さらに高校学習の到達度をはかる「高校基礎学力テスト」を新たに導入し、高校2年から年2回実施。「多肢選択」問題で、成績は「段階別」表示。推薦入試などで活用します。

高校授業に影響

 これら二つのテストが年複数回実施となれば、受験時期の早期化を招き、生徒や教育現場の負担が増すのは必至です。「英検」の導入も負担増となり、授業や行事の見直しは避けられません。「3年生は1年分の教科を9カ月で修了させている。現行以上の短縮は極めて困難」(全国高等学校長協会)とされています。

 成績の「段階別」表示にしても、「競争試験であることに変わりない」(大手予備校)と指摘され、私立大学連盟は「高校も大学もしれつなランキング競争にさらされ、多大な負担を強いられる」と強調しています。

 大学の個別試験も課題です。答申は、面接や小論文などを加えて「多面的・総合的な評価」を求めています。

 こうした手法は相当な人手と時間がかかるため、「多面的な選抜は理想であり、現在の経営状況を考えると、一朝一夕にはできない」(私立大学連盟)のが実態です。

 このほか、「学力評価テスト」で「総合型」設問をどうやって作成し、難易度をどう設定するのかなど、重要課題はすべて今後設置する専門家会議に先送りされたままです。

国民的な議論を

 世界の主要国を見れば、日本のような異常な競争主義的な入試制度は極めて特殊です。

 ヨーロッパでもアメリカでも、大学入学資格を与える、論述式を中心とした共通テストがあるだけで、個別の学力試験はごく一部の大学をのぞいて原則としてありません。フランスでは資格取得者は無選抜で大学に入学でき、ドイツでも資格があれば原則、希望の大学に入学可能です。

 大学入試のあり方は大学以下の教育を大きく規定します。「入試制度が一層複雑化し、受験生に無用の混乱と負担を強いることになる」(日本私立中学高等学校連合会)との声が上がっています。競争主義からの脱却という立場に立って、広く国民的な議論をへて抜本改革を行うことが必要になっています。

 (深山直人)

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