2014年12月24日(水)
きょうの潮流
自分に正直で善良な兵士なのに、一つひとつの言動に周囲から「バカ」「まぬけ」と、いつも罵倒の声が飛びます。『兵士シュヴェイクの冒険』(岩波文庫)の愛すべき主人公に▼第1次世界大戦でオーストリア帝国内のチェコの一兵士が、上官の命令に忠実に行動することで、大戦下の出来事をユーモアたっぷりに描き出しています。チェコのハシェクの作品(1921〜23年)で、反戦風刺文学の傑作とされます▼「愚劣な世紀」に生まれてきたばかりに、牛のように無理に「屠殺(とさつ)場」へ引っぱられ、命を落とす若者の運命を嘆きます。一方、皇帝、王、大統領、元首ら戦争遂行者を「屠殺人」と告発します▼ドイツの劇作家ブレヒトは、この作品をヒントに、戯曲「第2次大戦のシュヴェイク」を創作。シュヴェイクとヒトラーの「歴史的会見」の場面を設け、スターリングラードを目前にして雪のなか道に迷い、行き場を失うヒトラーを皮肉っています▼戯曲の最後で、「モルダウの歌」(岩淵達治訳)が全員で合唱されます。「時代も変わる、権力者の大計画もいつかは挫折し/強そうに歩いて見せても、時の流れにゃ逆らえぬ、権力者も」▼来年は、世界の民主主義の力で侵略戦争を打ち破った第2次大戦の終結から70周年。先の総選挙では、「海外で戦争をする国」づくりの危険を感じ取った国民が、日本共産党に反戦・平和への思いを託しました。若者を戦場に送るくわだてに反対するたたかいは、勢いをつけて新年に引き継がれます。