2014年12月24日(水)
主張
介護報酬下げ方針
「安心の基盤」の崩壊を許すな
安倍晋三政権が介護保険制度の介護報酬を来年4月から大幅に引き下げる動きを強めています。社会保障費を「聖域なく」見直すのが安倍政権のもともとの方針ですが、消費税再増税の先送りで「財源不足」になるという脅し文句まで使って、削減にさらに拍車をかけようという悪質なやり方です。高齢者人口が増えて公的介護の拡充・強化がますます必要だというのに、介護水準を低下させる報酬引き下げは、「安心の基盤」の根本を揺るがす重大な逆行です。
特養ホームに大打撃
介護報酬は、介護サービスを提供する事業者に公費で支払われる対価で、報酬総額は2015年度予算編成のなかで来月中に決定します。介護報酬改定は3年に1度行われ、来年度は2000年の介護保険発足後5度目となる改定です。今回は、財務省が「6%」と具体的数字を挙げ、前例のない大規模な報酬削減を要求するなど、安倍政権の強硬姿勢は歴代政権のなかでも突出しています。
とくに「標的」にしているのが特別養護老人ホームやデイサービスなどへの報酬です。財務省は、特養などが一般中小企業より収支の差が良好だとか、多くの「内部留保」を抱えているとかいって報酬削減を正当化しようとしていますが、介護現場の実態を無視した乱暴な主張です。
特養などの収支差は施設や地域ごとに違いがあり一律に描けません。むしろ、特養の3割近くが現在も赤字で、「6%削減」が行われれば6割近くが赤字になるという深刻な調査結果(全国老人福祉施設協議会)が判明しています。
特養の「内部留保」は、非営利法人としてのさまざまな制約のなかで施設の改修・建て替えに備えたものなどであり、大企業がため込んでいる内部留保とは性格が異なるものです。特養が不当に利益をため込んでいるかのようにいうのは間違いです。
特養待機者が全国で約52万人に達するなか、特養経営を圧迫し、苦境に追い込む報酬削減は、特養の拡充・増設にブレーキをかける「冷水」です。特養から締め出される高齢者をますます増加させる逆行は絶対に許されません。
政府は介護職員の「処遇改善」措置を講じるといいますが、介護報酬全体削減で事業所経営が苦しくなり見通しがたたなければ、労働条件の悪化は避けられません。
介護報酬1%削減で減らされる税分約500億円は、法人税減税1%分で必要になる財源約5000億円の10分の1です。介護予算は容赦なくカットし、内部留保をため込む大企業には大盤振る舞い―。あまりにひどい逆立ちです。
介護施設団体が100万人分を超える削減反対署名を集め「利用者や介護従事者にしわ寄せするな」と怒りの叫びを上げています。この現場の声まで無視するのか。
介護報酬削減は中止して、利用者の負担増にならないよう手だてをしながら介護報酬の増額・底上げに転じるべきです。
国民の共同を広げて
安倍政権は、報酬削減と同時に、今年6月成立を強行した「医療・介護総合法」にもとづき、特養の入所厳格化と負担増、要支援者の公的介護からの締め出しなどを全面的にすすめようとしています。「介護破壊」を許さない国民のたたかいと共同がいよいよ必要です。