2014年12月21日(日)
主張
原発推進に拍車
「再稼働ありき」の政策転換を
九州電力川内(せんだい)原発に続く関西電力高浜原発での再稼働への動き、まだ建設中の電源開発大間(おおま)原発の規制委への審査申請、原発の運転を前提にした再生可能エネルギーの買い上げ制約…。原発をめぐる動きが活発です。共通するのは、安倍晋三政権が原子力規制委員会の審査に適合した原発は再稼働させるとしていることをうけ、原発推進を加速していることです。安倍政権と財界、電力業界などの動きは、原発事故の再発に不安をつのらせ、「原発ゼロ」を願う国民の気持ちを逆なでするものです。加速をやめさせ、「原発ゼロ」を決断させることが急務です。
審査は安全を保証しない
いま全国に48基ある原発は1基も動いていません。3年9カ月前の東京電力福島原発の事故がいまだに収束しておらず、いくら規制基準を見直しても、事故を繰り返さない保証がないからです。しかも原発は動いていなくても、昨年冬も今年の夏・冬も電力は賄えています。電力業界などは原発が停止しているため、稼働させている火力発電所の燃料費がかさむことを原発再稼働を急ぐ口実にしていますが、人間の生命や環境に深刻な被害を及ぼす原発の再稼働と、電力会社の経営問題をてんびんにかけるのは重大な誤りです。
安倍政権が、原子力規制委の審査に適合した原発は再稼働させると、電力会社とともに原発の再稼働を急いでいること自体が間違っています。規制委の審査は原発の安全を保証しません。「合格第1号」となった川内原発の審査は、地震や津波の想定を見直しただけで周辺に集中する火山噴火へのそなえはなく、事故が起こった場合の対策も間に合わせで、住民避難は審査の対象外です。
高浜原発(3、4号機)の場合も同じです。審査書案では地震や津波の基準は見直しましたが、事故を起こした場合の対策拠点はまだできてもいないのに「合格」の判定です。周辺に集中している大飯(おおい)や美浜などの原発への対策もありません。近隣の京都府や、関西の「水がめ」である琵琶湖がある滋賀県が再稼働に懸念を示してしているのも無視しています。
電力業界は全国各地の原発について規制委の審査を申請しており、電源開発は建設中の大間原発についてまで審査を申請しました。まったく異常です。関西電力は老朽化した高浜原発1、2号機についても再稼働を申請することをねらっています。こうした動きはすべて、安倍政権が原発の再稼働を認め、原発推進に前のめりの姿勢をとっているから起きていることです。安倍政権の姿勢を抜本的に改めさせることが不可欠です。
再生可能エネの拡大こそ
こうしたなか、九州電力など電力会社は太陽光など再生可能エネルギーの買い上げを制約する方針を打ち出し、安倍政権も同意しました。買い上げ制限は事故で停止中の原発まで稼働させる前提です。原発を再稼働せずに「原発ゼロ」を決断してこそ再生エネルギーの開発も進みます。
原発は運転を始めたとたん事故の可能性が高まり、危険な廃棄物もたまります。原発は再稼働せず、停止したまま廃止に向かうべきです。過半数の国民は再稼働に反対し「原発ゼロ」を求めています。安倍政権と電力業界はこうした声にこそ応えるべきです。