2014年12月18日(木)
震災の犠牲 検証・提言
冊子 『子どもの「いのち」を守りぬくために』
宮教組が作成
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東日本大震災は、宮城県内の小中学生や教職員に多大な被害をもたらしました。宮城県教職員組合(宮教組)が作成した冊子『子どもの「いのち」を守りぬくために』は、1年半かけた検証から震災時の教訓を導き出した「提言集」です。
宮城県内で津波の犠牲になった小中学生は261人、教職員は17人もいます。宮教組は『教職員がつづる東日本大震災〜学校で何があったのか語りたい、残したい、伝えたいこと』と題して第1集、第2集を発行してきました。今回の冊子はその第3集です。
多大な犠牲が出たにもかかわらず、県教育委員会は子どもたちの詳しい被害状況を明らかにしていません。
宮教組の瀬成田実委員長は「今回の調査は、子どもたちの命を守る貴重な資料になるはずです」と話します。
なかでも、津波で命を奪われた小中学生全員分をつぶさに調べたデータは、「助けられなかった子どもたち」の教訓を次世代に継ぎたいとの思いにあふれた調査です。
津波で犠牲になった小中学生の動向を調べたところ、高台へ避難中だったのは36%で、「自宅へ向かう」「自宅待機」など、約6割が高台への避難を優先せずに犠牲となっていたことがわかりました。
被災場所の内訳では、「路上徒歩」の32%に続き、「路上の車中」が29%もありました。車で津波にあった場合の避難のあり方・対策を、免許の習得時や書き換え時に学ぶ場が必要だと指摘しています。
今後に生かすため、命をつなぎとめた人々がどう逃げたのかを記述。「学校の対応に関する教訓・課題チェックシート」を収めました。
「あの日から」には、中高生の震災体験記録を収載。震災当時の作文や、思い起こしてつづった記録が、リアルに震災を伝えます。
ある女子生徒は一人で下校途中に津波に襲われました。「私はどうしたらいいかまったくわからなかったので、無意識に道路をはさんで向こうの松につかまりました。精いっぱい手をのばして、しっかり大きな松の木につかまりました…」
県教委の乱暴な人事異動や、異動元と異動先との「兼務発令」についてのアンケート調査も掲載。震災直後の人事異動には過半数の教職員が「問題があった」と答え、被災校や被災した子どもから離れる後ろめたさ、苦しさが書かれています。
瀬成田委員長は「教職員や教育委員会、行政や地域の防災担当者に手にとってもらい、今後に生かしてほしい」と話しています。
冊子は1000円(送料込み。5冊以上の送料は要相談)。申し込みは住所、氏名、電話番号、冊数を明記してファクス022(274)2130へ。