2014年12月18日(木)
ひとり親世帯 貧困率
働いている方が高い
問われる非正規拡大
日本の母子家庭は、働いている世帯の方が働いていない世帯よりも貧困率が高い―諸外国と比べても異常な実態が明らかになり、非正規雇用の拡大をすすめている日本政府の姿勢が問われています。
経済協力開発機構(OECD)の調査(1月)で日本は、働いていないひとり親世帯の相対的貧困率(以下、貧困率)は50・4%(2010年)ですが、働いているひとり親世帯では50・9%となり、逆に貧困率が上昇することが明らかになりました。
働いているのに貧困率が上がっている国は日本だけです(図)。OECD加盟の各国平均の貧困率は、働いていない場合の58%に対し、働いている場合は20・9%と格段に低くなっています。日本より貧困率が高いベルギー、米国、ドイツなどでも、働けば貧困から抜け出せる状況となっています。
日本の母子世帯の就労率は、断トツの85・4%(2011年)です。一生懸命働いているにもかかわらず貧困から抜け出せない大きな原因の一つは雇用形態にあります。
母子世帯の働き口は「パート・アルバイト等」が47・4%(全国母子世帯等調査結果報告・2011年度)と最も多く、「派遣社員」と合わせると非正規雇用は5割を超えます。非正規雇用が増加する一方で正規職が減らされており、ひとり親で子どもがいることが就労条件などで不利になり、非正規雇用にしかつけない現実があります。
日本の女性労働者の賃金は、正社員で男性の7割となっています。非正規雇用も含めれば、男性の半分の低さです。欧米諸国では、女性の賃金は男性の8割、9割へと格差が縮小していますが、日本の男女の賃金格差の是正は大きく立ち遅れたままです。
安倍政権は、「雇用が増えた」としていますが、この2年間で非正規雇用は123万人増える一方、正規雇用は22万人も減っています。生活保護については、戦後最大の生活保護基準引き下げを強行し、生活保護法改悪で利用者の締め付けを図ろうとしています。
さらに2015年度の予算編成では、住宅扶助や冬季加算の削減を狙っています。民主党政権の時に復活した、「母子加算」までも削減対象にあげています。
正規雇用拡大を
立教大学の湯澤直美教授の話
母子世帯が貧困から抜け出せない背景には、非正規雇用が広がっている現状、税や社会保険料負担が低所得者ほど重いのに社会手当などの給付は薄い制度設計、教育や住宅費などの自己負担が生活を圧迫している問題などがあります。これらが総合的に改善されなければなりません。
同じOECDデータからは、二人親世帯が共働きしても貧困率がほとんど改善されず、女性の就労が貧困を緩和しないことが分かります。
普通に働いて子育てができるようにするために、正規雇用の拡大が必要です。同時に労働時間の短縮、保育所整備など子育て支援の拡充も必要です。パートであっても生活できる賃金の引き上げと、同一価値労働同一賃金の実現、男女の賃金格差の是正も急がれます。
男性の長時間労働で家計が成り立つ異常な実態が日本にはありますが、ワーク・ライフ・バランス(仕事と生活の調和)がひとり親世帯でも実現し、一定の質がある暮らしができるようにならなければなりません。
そのうえで、ひとり親であることの負荷に対し、児童扶養手当などの給付をきちんと行うことが必要です。
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