2014年12月7日(日)
左翼党から初の州首相 独東部州で3党連立
旧東独の独裁を批判
メディア 「将来への一歩」評価
ドイツ東部のテューリンゲン州で5日、左翼党の州議会議員団長のボド・ラメロウ氏(58)が州議会で州首相に選出されました。旧東独の与党の流れをくむ左翼党出身者が州首相になるのは1990年の東西ドイツ統一後初めてです。
左翼党は9月の州議選で、得票率28・2%、議席28議席を獲得し、得票率、議席とも伸ばし、キリスト教民主同盟(CDU)に次いで第2党に。第3党の社会民主党(SPD)、第5党の90年連合・緑の党と連立政権樹立で合意。議員定数91の過半数に当たる46議席を確保していました。
5日、2回目の投票で46票の賛成を得ました。独メディアは、「25年前のベルリンの壁崩壊後、初の旧東独与党の流れをくむ政党から州首相が誕生したことは歴史的であり、国全体としても大きな意味を持つ。この連立の組み合わせは将来への一歩だ」(日刊紙フランクフルター・ルントシャウ)などと評しています。
新首相となったラメロウ氏は選出後に演説し、左翼党が旧東独時代の過去と向き合ったことに触れ、旧東独時代の独裁体制や住民監視などの歴史を繰り返さない考えを強調。「われわれに必要なのは互いに分け隔てることではなく、和解だ。ともに政治的ライバルを公正に扱い、敬意を示す政治風土をつくっていこう」と野党側にも呼び掛けました。
同党から州首相が出ることにはメルケル首相が旧東独時代を「不法国家だった」とした上で、「左翼党の州首相への社民党の支持には問題がある」と批判。中立を守るべきガウク大統領までもが強硬に反対を主張していました。
左翼党から州首相が出ることで最大の問題となった東独時代の過去の克服については、3党の連立交渉でもっとも突っ込んだ論議が行われました。3党の連立政権合意文書では、「東独時代の統治について、旧与党の社会主義統一党の独裁国家であり、法治国家ではなかった」「個人の自由や生活のすべての面への秘密警察の耐え難い侵害を批判的に総括する」と踏み込んでいます。
左翼党は、貧困層の救済や社会保障の充実を主張し、支持を拡大。13年の総選挙では09年の時よりは後退したものの、8・6%の得票率で64議席を獲得しています。(片岡正明)
左翼党 旧東独の政権党、社会主義統一党からの流れをくみますが、東西統一後、東独の非民主主義体制を批判し民主的社会主義党(PDS)として再出発。2005年に左翼党に改称して旧西独で社会民主党の左派や労組の幹部らがつくった「労働と社会的公正のための選挙代案」(WASG)と下院選挙の統一名簿を作成。後に統合し、2011年に綱領を採択。欧州議会の左翼勢力の中心的存在の一つで、同党を中心に欧州左翼党も結成しています。
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