2014年11月29日(土)
安倍首相の雇用・賃金発言 本当なのか
安倍晋三首相の雇用、賃金問題での発言がひどすぎます。政権発足以来、雇用は100万人以上増え、この春に賃金は2%以上アップしたといい、「経済の好循環が生まれようとしている」「この道しかない」と大威張りです。本当でしょうか。Q&Aで考えます。
Q 雇用が100万人増えたというが
A 増えたのは非正規 正規社員は22万人減る
Q 本当に雇用はふえたんでしょうか?
A たしかに雇用は100万人増えました。しかし、問題はその中身です。
増えたのはパート、期間社員などの不安定な非正規雇用で123万人です。正規雇用は逆に22万人も減っています。
つまり正社員を減らして、賃金が安く、いつでも解雇できる非正規雇用への置き換えが大規模にすすんだということです。「雇用維持型から労働移動支援型への転換」などと主張し、企業の利益拡大のために雇用の流動化政策をすすめた結果にほかなりません。
日本のパートの賃金水準はヨーロッパの各国と比較して異常に低く、正規雇用の56%です(厚生労働省「賃金構造基本統計調査」)。ヨーロッパではスウェーデンが83・1%、デンマークが81・1%、ドイツが79・3%、フランスが74・3%などで、日本の低さが際立っています(労働政策研究・研修機構「データブック国際労働比較2014」)。
安倍首相が自慢する「100万人雇用増」は、雇用が良くなっているどころか、悪化しているのが実態です。国税庁の調査で、まともに働いても年収200万円以下のワーキングプアが1090万人から1120万人に約30万人増えているのもそのあらわれとみるべきです。
Q 賃金が2%アップしたというが
A 実質賃金は目減り 増税と物価高で生活苦
Q 賃金は増えたんでしょう?
A いえいえ、目減りしているんです。
ことしの春闘で賃金は、労働組合の連合の調査で2・07%(厚労省調査では2・19%)アップしました。
これは毎年自動的に上がる定期昇給分を含むもので、本来の賃上げであるベースアップは1%もないといえます。昨年に比べると金額でわずか1062円、率にして0・36ポイント上がっただけです。
この上昇分は、4月からの消費税増税と円安による諸物価高騰でたちまち消えてしまい、実質賃金は大幅に落ち込みました。夏のボーナスが出た7月も含めて15カ月連続で実質賃金が前の年を下回り、労働者の生活が苦しくなっているのが実態です。
安倍首相は、「名目賃金は上がっている」と言い訳していますが、賃金が目減りして家計がきびしくなっている現実の前ではまったく無意味な反論です。
Q どうすれば賃上げできるの
A 大企業の内部留保一部回して経済好循環
Q どうすれば賃上げできるんですか?
A 大企業の“ダム”にため込まれた利益の一部を活用するのが早道です。
大企業の利益は前年度比で8・8兆円増えて、34・8兆円という史上最高です(2013年度)。内部留保が13兆円増えて285兆円にふくらみました。
いま経済は「好循環が生まれようとしている」どころか、そもそも循環していません。大企業の利益は労働者に回らず、内部留保という“ダム”にため込まれ、そこにせき止められて流れ出ないという構造です。
内部留保の一部を、非正規社員の正社員化など安定した雇用の拡大と賃金のベースアップに活用すべきです。
これまでの内部留保に手をつけずに、今回ためこんだ一部を活用するだけでも、大幅な賃上げは可能です。
働く人の懐をあたためて消費を活発にすれば内需も増えるし企業活動も活発になります。こうやって経済の好循環をつくりだすことが大事です。
安定した雇用と、賃金の大幅引き上げで経済の好循環をつくるために内部留保の活用を―この声を大きくするときです。