2014年11月26日(水)
2014総選挙
「アベノミクス解散」で争点隠しねらうが――
問われるのは安倍政治全体
「アベノミクス解散」と自ら銘打つ安倍晋三首相。政権に都合のいいものだけを争点にして、選挙が終わったらその他の問題でも信任を得たとして暴走しようという魂胆が透けて見えます。しかし、問われるのは「安倍政治の全体」(日本共産党・志位和夫委員長)です。
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「この解散は、アベノミクス解散です。アベノミクスを前に進めるのか、止めてしまうのか、それを問う選挙です」。安倍首相は解散直後の会見(21日)でこう述べ、安倍政権の経済政策「アベノミクス」の是非が争点だと強調しました。
小泉手法まねる
この手法は、2005年8月、当時の小泉純一郎首相が「今回の解散は『郵政解散』です。郵政民営化に賛成してくれるのか反対するのか、国民に問いたい」といって、郵政民営化を唯一の争点に解散・総選挙をした時をほうふつとさせます。
安倍首相は会見で自分からはアベノミクスのことしか語らず、記者から、集団的自衛権行使容認の閣議決定や原発再稼働について「争点と位置づけるか」と聞かれてようやく、「通常国会に法案を提出する」「再稼働していく」と答えました。
「景気回復、この道しかない」と題した自民党のパンフは、都合のいい数字を並べて、「アベノミクスの成果」を宣伝。その他の争点は、抽象的言葉を並べているだけです。
集団的自衛権という言葉はなく、「国民の命と平和な暮らしを守り抜くため、安全保障法制を速やかに整備します」とあるだけ。原発再稼働や沖縄・米軍新基地建設については一言もありません。
菅義偉官房長官は、集団的自衛権行使容認や秘密保護法についてなぜ信を問わなかったのかと聞かれ、「一つひとつについて信を問うということじゃない。重大な変更について信を問う」と答え、“選挙の争点は政権が設定する”という身勝手な考えをのべました。
「真正面から論戦を深めないまま、選挙に勝ちさえすればお墨付きを得られるという姿勢を取るべきではない」(「毎日」24日付)と指摘されています。
ねらい隠せない
集団的自衛権
集団的自衛権の行使容認は、「海外で自衛隊が米軍とともに戦争をする国づくり」であり、憲法9条を破壊し、戦後日本の国のあり方を根底から覆す歴史的暴挙です。首相は通常国会に関連法案を提出すると表明しており、今度の選挙で審判を受けるべき大問題です。
原発再稼働
原発再稼働でも、「噴火は予知できる」という新たな安全神話に立って、住民の声も聞かず、避難体制もないまま、危険で乱暴な原発再稼働を進めようとしています。来年早々にも川内原発の再稼働がねらわれており、国民の審判が必要です。
社会保障でも、医療や介護で“老いも若きも大負担増”計画を立てながら、審議会に出すのを見送り、選挙が終われば決定・実行に移そうとしています。
沖縄新基地
沖縄・米軍新基地問題では、新基地建設阻止を掲げた翁長雄志氏が知事選に圧勝し、県民の民意が示されました。ところが「政府の立場はまったく変わらず粛々と進めていく」(菅官房長官)といって新基地建設を続けようとしています。国が沖縄の民意を踏みつけにしていいのか、が問われます。
25日に自民党が発表した選挙公約は、憲法改正原案を国会に提出▽米軍普天間基地の辺野古「移設」推進―などあらゆる分野にわたって民意に背く悪政を掲げており、国民の目はごまかせません。
メディアも「安倍政権にまつわるすべての特徴が、総選挙で問われる。最大の争点は安倍政治である」(「毎日」)「安倍政権の2年間の政策全体が問われる選挙となる」(「朝日」)と指摘しています。
逆に矛盾深める
政府・自民党は、アベノミクスに争点を絞ろうとして、逆に矛盾を深めています。
増税の先送り実施を表明した18日の会見で首相は、消費税引き上げが「個人消費を押し下げる大きな重しとなっている」と表明。ところが、21日の会見では、「雇用が増え、最高の賃上げが実現した」とのべ、アベノミクスが成果を上げていると強調しました。
“経済失政”との批判をかわすねらいですが、消費税増税推進の野党から「成功しているのなら消費税をなぜ今上げないのか」といわれるありさまです。
首相は2017年4月から「確実に消費税を引き上げる」と表明。これに対しても、今回は景気悪化を理由に「先送り」したのに、1年半後は景気状況にかかわらず増税を断行するとは「こんな乱暴な話はない」と批判の声が起こっています。
国民主権無視の審判逃れ
神戸学院大学教授(憲法学)
上脇 博之(かみわきひろし)さん
「アベノミクス解散」「争点は政府が決める」とか言うのは“選挙が主権者国民のためのもの”という認識が見られません。選挙が政府・与党の政略の手段にされています。国民主権なのに、国民の主体性を軽視した発言です。
安倍首相は、争点を設定すればマスコミはその通りの報道をし、小選挙区制のおかげで「勝てる」というおごりがあるのでしょう。
これは逆に言えば、国民の反対を無視して強行した集団的自衛権行使容認、秘密保護法制定、消費税増税、原発再稼働、辺野古移設が争点になれば不利になるから、争点をそらし自分に都合のよいように設定したいのです。これまでの暴走政治に対する厳しい審判を受けるのが怖いのでしょう。「アベノミクス」の是非というごまかしの「土俵」でも、自分の都合のいい結果だけを挙げて「成功」だと言い募っています。ここにも、解散に大義がなく「政治とカネ」問題で追い込まれて解散したという本質が如実に現れています。