2014年11月24日(月)
“増税不況”招いた経済失政(アベノミクス)
ごまかしの手法通用しない
安倍首相は「アベノミクス解散」と売り込み、都合のいい統計数字を持ち出して、「好循環が生まれている」と自画自賛しています。しかし、国民の実感とはかけ離れています。それもそのはずで、実態やそれを反映した統計に照らせば、“増税不況”を招いた経済失政をごまかす手法にすぎないことは明白です。
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賃 金
15カ月連続で実質マイナス
安倍政権になって、円安による物価上昇で生活苦が襲いかかっています。名目賃金から物価上昇分を引いた実質賃金は前年比2・9%減(9月)で、15カ月連続で減少。民間平均給与(現金給与総額)を見ても、安倍政権発足前の2012年11月と比べ、約8900円もダウンしています。
ところが、安倍政権・自民党は「賃上げ率が今年は2%を超えた」(茂木敏充選対委員長、22日)とごまかします。
「2%」の賃上げは連合調査によるものですが、実際のベースアップ(基本賃金引き上げ)獲得分はわずか0・38%、残り1・69%は定期昇給相当分です。集計対象は270万人で、雇用者数5600万人の4・8%にすぎません。賃上げは、非正規労働者をはじめ大多数の労働者にはほとんど波及していません。
厚生労働省の毎月勤労統計では、名目賃金(9月)は前年比0・7%増で、2%を大幅に下回る結果に。その名目賃金の上昇も、「アベノミクス」による物価上昇で大幅に目減りしているのが実際です。
雇 用
増えたのは非正規労働者
雇用はどうか。
「雇用は100万人以上増え、高校生の就職内定率は13%アップ」(首相、21日)「有効求人倍率は1・09とこの20年間でもっとも高い数字」(茂木氏、22日)などとばら色であるかのように描いています。
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しかし、増えたのはすべて非正規労働者です。総務省の労働力調査(7〜9月期平均)によると、2012年と比べて非正規雇用で123万人増加。正規雇用は22万人減っています。
有効求人倍率が1・09倍(9月)と“22年ぶりの高水準”といいますが、正社員は0・67倍。正規雇用の求人は1倍を切る厳しい状況が続いています。高校生の就職内定率が54・4%(9月)で2012年比13%改善としていますが、内定が決まったのは半分程度しかなく依然、厳しいままです。
中小企業
円安不況直撃倒産企業2.8倍
中小企業は、「増税不況」と、円安による資材高騰で苦しんでいます。
ところが、「中小企業の景況感も22年ぶりにプラス」(茂木氏)「倒産件数は24年ぶりの低水準」(自民党ビラ)などと自慢しています。
実態は、「アベノミクス」が中小企業の経営を直撃。帝国データバンクによると、円安の影響を受けて倒産した企業は前年に比べ2・8倍に増加。輸入原材料や燃料費の高騰が経営を圧迫し、さらに、多くの倒産を生むとの観測も示されています。
消費税増税による影響も深刻です。全国中小企業団体中央会の月次景況調査(10月)によれば、企業や業界の景況感を示す景況DI(指標)はマイナス27・4と4月以降、連続で下落。売上高DIもマイナス15・8と4月以降一貫して下落しています。都合のいい数字だけ打ち出しても実態はごまかせません。
インフラ輸出
中心は「原発」利益は大企業
自民党は「(首相の)トップセールス等により、日本企業の海外インフラの受注実績が約3倍」(パンフ)と宣伝しています。
しかし、インフラ(社会資本)輸出は、大企業のもうけを増やすだけで、国民の利益にはつながりません。
安倍首相のトップセールスにより、受注実績が3・2兆円(2012年)から9・3兆円(14年)になったといいますが、ベトナムやトルコに対する危険な「原発輸出」が中心。輸出先となる現地では、原発への不安や反対の声が広がっています。
トルコでは、原発立地予定地(シノップ県シノップ中央市)の市長が原発反対を掲げて当選し、トルコ国内の大手世論調査(13年4月)でも63%が建設反対の意思を示しています。
“暮らし第一”への転換こそ
安倍首相は、「アベノミクスを前に進めるのか、それとも止めてしまうのか。それを問う選挙」といいます。しかし、格差を拡大し景気悪化をもたらしたアベノミクスをさらに推進すれば、格差と貧困がいっそう深刻に広がります。
アベノミクスの3本目の矢である「成長戦略」をまとめたのが「日本再興戦略」です。安倍内閣は、6月に改訂版を決定。雇用分野では、労働時間規制を取り払い、「残業代ゼロ」となる「『新たな労働時間制度』を創設する」ことや「裁量労働制の新たな枠組みの構築」などを明記。過労死や働く人間の「使い捨て」が促進されます。
農業分野では、「農業・農協改革」を打ち出し、企業的農業へ向けた農政に転換。日本農業を支えてきた家族経営の基盤を掘り崩し、農業と食料の危機をいっそう深刻なものにします。医療分野では、カネのあるものだけが医療を受けられる「混合診療」を拡大し、無差別・平等の国民皆保険制度を空洞化させます。原発は、「安全性が確認された原子力発電の活用」として、再稼働を進める危険な立場です。
いま求められるのは、▽人間らしく働けるルールの確立▽社会保障切り捨てから充実への転換▽農業を破壊し、国民皆保険制度を壊し、食の安全を壊す環太平洋連携協定(TPP)交渉からの撤退とあわせ、安心して農業が続けられる価格保障と所得補償―。暮らし第一で経済を立て直す政治への転換こそ必要です。