2014年11月13日(木)
主張
消費税再増税
中止・断念こそ世論に応える
今週相次いで発表された新聞やテレビの世論調査で、安倍晋三政権が来年10月から強行しようとしている消費税の税率8%から10%への引き上げに、7、8割に達する国民が反対していることが明らかになりました。安倍首相は週明け17日に第1次速報が発表される7〜9月期の国内総生産(GDP)や政府が開いている検討会合の結果を見て判断するとしていますが、7割を超す国民の反対世論を足蹴にすることは許されません。再増税の実施中止は当然です。延期するだけでなくきっぱり断念し、国民の暮らしを破壊する経済政策を根本から転換すべきです。
アベノミクスの破たん
国民の間で消費税再増税反対の世論が急速に高まっているのは、4月からの消費税率の8%への増税が国民の消費を落ち込ませ、経済を急速に悪化させているだけでなく、発足から2年近くになる安倍政権の経済政策「アベノミクス」が、国民の暮らしを悪化させ、日本経済を破たんの際に立たせていることがだれの目にも明らかになってきているからです。
71%が消費税を「引き上げられる状況ではない」と答えた「朝日」の世論調査(11日付)では、安倍政権の経済政策で暮らし向きが「よくなった」という答えは4%しかなく、「変わらない」は66%、「悪くなった」は28%です。4月の増税前の調査にくらべても「変わらない」が減り「悪くなった」が増えています。再増税の延期、反対が81%を占めた「読売」の調査(同)でも、安倍政権のもとで景気回復を「実感していない」という答えが79%と圧倒的です。
安倍政権は発足以来「経済再生」を第一の課題に掲げ、異常な金融緩和や財政支出の拡大など「アベノミクス」を推進、経済が上向くことを消費税増税の条件にしてきました。再増税を決める時期を迎えても反対の世論がおさまらず、政権の中からも再増税の延期論が出てくること自体、「アベノミクス」と増税路線が破たんしたことを証明するものです。
「アベノミクス」は、異常な金融緩和で国内に出回る資金を増やせば、株高で大企業のもうけが増え、円安で輸出も増えて、労働者の賃金が上がり、消費も増えると宣伝しました。しかし実際には株高で大企業の含み資産や大資産家の所得が増えただけで、労働者の賃金は上がらず、円安で物価が値上がりして実質収入が目減りしたぶんだけ、消費が逆に落ち込んでいます。勤労者の実質賃金は増税前から15カ月連続で前年を下回っています。4月からの消費税増税で国民の消費がさらに冷え込み、景気が落ち込んだうえ、夏以降も回復が大幅に遅れているのも、「アベノミクス」のためです。
「黒田バズーカ」は有害
消費税再増税の前提になる景気に不安が出たというので、黒田東彦(はるひこ)日銀総裁は10月末金融緩和を追加する「黒田バズーカ」を発表しました。その結果株価は上がっていますが円安はさらに進み、物価上昇の懸念は高まっています。間違った政策の追加は有害です。
「アベノミクス」による増税路線が破たんした以上、消費税の再増税は延期するだけでなくきっぱり断念するのが当然です。大企業優遇の「アベノミクス」はやめ、家計に軸足を移し国民の所得を増やす政策に切り替えるべきです。