2014年11月11日(火)
政府の消費税宣伝 ウソの“百貨店”
社会保障どこが「充実」?
政府が消費税10%への増税に向けた宣伝に1億6千万円もつぎこんだ事実の報道(本紙1日付)が反響を呼び、「政府のウソについて詳しく報じてほしい」との声が寄せられました。政府の宣伝はまさにウソとごまかしの“百貨店”です。(杉本恒如)
軍事費などに増税分を流用
政府の宣伝は、消費税増税分が「社会保障に着実に使われています」(テレビのコマーシャル)、「すべて、社会保障の充実と安定化のために使われています」(新聞広告)と強調しました。しかし「充実」も「安定化」も事実に反します。
消費税率を8%に上げた今年度、増税による増収は5兆円と見込まれています。政府はそのうちわずか1割(5千億円)しか社会保障の「充実」に回していません。
残りの8割以上(4・25兆円)を、政府は社会保障「安定化」のためだといいながら、他の用途に流用しています。つまり、所得税収や法人税収などでまかなってきた既存の社会保障制度の財源を、消費税増税分に置き換えただけのことです。浮いた所得税収や法人税収などは他の予算に回しています。
安倍政権は、大企業減税(震災復興増税の企業負担廃止など)を進め、不要不急の大型公共事業費、軍事費を膨張させています。消費税増税分はこれらに流用されている、というのが真実です。
とりわけ悪質なのが、すでに実施されている基礎年金の国庫負担割合引き上げ(3分の1から2分の1へ)を「恒久化」するため、という口実です。政府はまったく同じ理由を挙げて、2004〜07年に年金課税の強化や所得税・住民税の定率減税縮減・廃止を行いました。消費税増税分を充てるというのは二重取りです。「充実」額より削減が上回る 安倍政権が実際に進めているのは、社会保障の連続改悪です。
今年度は0・7%の年金削減(3500億円減)や、70〜74歳の患者負担2倍化(完全実施で4千億円負担増・給付減)を強行しました。「充実」に使われる金額(5千億円)を、切り捨て額が上回っています。
消費税を10%に増税する場合も同じです。増税5%分(14兆円)のうち、政府が「充実」に使うとしているのは1%分(2・8兆円)にすぎません。安倍政権はこれを上回る社会保障改悪を強行しようとしています。切り捨て額は計算できる分だけでも3・5兆円を超えます。(表1)
「充実」の中身も問題です。▽株式会社参入や基準引き下げで保育の質を低下させながらの保育所増設▽入院患者の強引な追い出しを目的とする病床再編―などを「充実」と呼んでいるからです。
年金・医療・介護の受給権は切り縮められる一方です。社会保障は充実などしません。
改悪メニュー続々打ち出す
消費税増税で社会保障をまかなう「一体改革」は、社会保障を必ず不安定化させます。高齢化で費用が増える分は増税か給付減で対応せよ、という立場だからです。
現に、安倍政権がねらう社会保障改悪は消費税増税前に示していた内容にとどまりません。新たなメニューを次つぎに打ち出しています(表2)。社会保障を切り捨てながら「充実」と称して増税を押し付ける―。国家的詐欺そのものです。
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