2014年11月9日(日)
赤旗全国囲碁・将棋大会 がん闘病の29歳 8強
将棋通して勇気与えたい
天野貴元さん
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「生きてる事、それだけで楽しい」。ベスト8に進出した天野貴元(よしもと)さん(29)=東京代表=は、がんとたたかいながら将棋を指し続けています。かつてはプロを目指していましたが、いまはその道を断念し、アマチュアの大会に出場して、将棋の普及活動にも取り組んでいます。
リーグ戦は2局とも1時間を超える熱戦でした。ときおり開く扇子には「一徹」の文字。子どものころ通った「八王子将棋クラブ」の先輩、羽生善治名人の扇子です。
トーナメント戦に進んでからも好調を維持。「自分らしいたたかいができた」と天野さん。抗がん剤を服用しての対局でしたが、「試合の結果を薬のせいにはしたくない」と、負けん気ものぞかせます。
6歳で将棋を始め、10歳でプロ棋士を養成する奨励会入り。しかし、年齢制限の26歳までにプロ資格の四段になることはできませんでした。
赤旗名人戦の優勝者はプロの将棋新人王戦(しんぶん赤旗主催)の参加資格を得ます。「優勝して、もう一度、プロと指したい」
奨励会を退会して1年がたったころ、舌に突然の痛みが走りました。診断は舌がん。「プロにはなれず、がんにまでなるなんて」と、自分の身に降りかかる出来事を嘆いたこともありました。
10時間を超える手術は成功しましたが、苦しい放射線治療が待っていました。舌を摘出したため言語障害が残り、いまは筆談ボードを持ち歩いています。
しかし、ここから新しい将棋人生が始まりました。
退院後、1週間でアマの将棋大会に参加します。奨励会を退会して以来、1年半ぶりに触る駒。
「やっぱり将棋が好きだった。将棋から多くのものを得て、あきらめずに、がんに立ち向かうことができました。同じ境遇の人を励ましたい。将棋を通じて、多くの人に勇気を与えたい」