2014年11月9日(日)
主張
再生可能エネ
原発続ける力を振り向ければ
九州電力川内(せんだい)原発など原発再稼働の動きが強まる中、太陽光や風力、地熱など地球温暖化に結びつかないとされる再生可能エネルギーで発電した電力を、九電など一部の電力会社が買い取りを拒否していることが大問題になっています。経費が大変などという電力会社の言い分をうけ、経済産業省は買い取り価格の引き下げなどの検討を開始していますが、本来法律で全量買い取りを義務づけているものを拒否するのは道理がありません。九電などが再稼働を急ぐ原発のための力を振り向ければ、買い取りは可能です。
一方的な買い取り拒否
九州電力などの買い取り拒否は、再生可能エネルギーで発電した電力を電力会社に売り、送電線に接続しようと申し込んだのに、回答を「保留」するというやり方です。送電線にのらなければ発電しても無駄になるだけなので、事実上の買い取り拒否です。東日本大震災後、民主党政権が成立させた再生可能エネルギー促進法は、太陽光、風力など再生可能エネルギーで発電した電力を、電力会社が全量、固定価格で買い取ることを求めており、買い取り拒否が法律に違反するのは明らかです。
九州電力など買い取りを拒否している電力会社は、太陽光などの開発が急速で送電網の整備が間に合わない、買い取りの固定価格が高すぎる、太陽光や風力での発電は不安定で火力などの設備がいる――といいます。しかし、そうした問題が起こりうることはもともと予想できたことで、政府と電力会社の見通しと対応の悪さが、矛盾を大きくしているだけです。
急速に開発が進んでいるといわれる太陽光発電も、承認を受けただけで発電は始めていない業者が多く、九州電力でも発電を始めているのは承認されたうちの2割に達せず、発電量は春や秋のピーク時需要の3分の1以下です。予想を超えて進んでいると大騒ぎする根拠はなく、送電網や余った電力を蓄える蓄電設備などの整備はこれからでも間に合います。
買い取り価格が高いといわれるのは、大手開発業者の主張を入れて高めに設定されているためでもありますが、電力会社はすべて電気料金に上乗せして消費者に転嫁できる仕組みなので、さしあたり経営を圧迫しているわけではありません。経産省は国が発電事業を認可した段階で決めている買い取り価格を、電力会社との契約時か、発電を開始した時点に遅らせる検討を始めていますが、いずれも小手先の対策です。政府と電力会社の対応の不十分さと見通しの甘さを、買い取りを拒否する根拠にするのは許されません。
原発は巨額の費用で継続
再生可能エネルギーで発電した電力の買い取りを停止している九州電力が、原発の再稼働で先頭を走っているのは許されません。原発は建設だけでなく、運転中も停止中も巨額の資金がかかります。万一事故を起こせば取り返しのつかない被害を及ぼします。原発にかかる費用を振り向ければ、再生可能エネルギーの開発を大きくすすめることができます。
地球温暖化や原発事故への懸念が深まるなかで、再生可能エネルギーの利用拡大はいまや国際的な流れです。電力会社の買い取り拒否が、こうした世界の流れにも逆行しているのは明らかです。