2014年10月31日(金)
主張
40人学級復活方針
行き届く教育の土台崩すのか
財務省が、現在行われている公立小学校1年生の35人学級を40人学級に戻すよう文部科学省に求める方針を財政制度等審議会(財務相の諮問機関)に示しました。35人学級は広範な教育関係者と国民の長年の運動によって実現したものです。子どもたちへの行き届いた教育をすすめるためには、35人学級を全学年に広げ、1クラスの少人数化をさらに進めるべきです。40人学級に引き戻すことは絶対に許されない逆行です。
根拠のない決めつけ
小学校1年生の35人学級は、2011年に義務教育標準法が改正され、31年ぶりに学級編成基準が改善されたことにより実現しました。貧困の広がりや社会のゆがみの中で、困難を抱える子どもたちが増え、教職員の多忙化が深刻になる中、一人ひとりによりそった丁寧な教育を求める声の広がりを受けてのものです。
文科省は段階的に小中学校の全学年で35人学級にする計画を立てていましたが、財務省は財政難を理由に小1までしか認めていません。小2については法改正せずに、毎年特別に予算をつけて35人学級にしているのが現状です。
ようやく実現した小1での35人学級さえ40人に戻そうという財務省の今回の方針は、国民の力でつくり上げてきた到達点を大本からひっくり返すものです。
財務省は、小学校全体のいじめの認知件数や不登校、暴力行為の件数に占める小1の割合を、35人学級導入前の5年間と導入後の2年間について比較し、導入の前後でほとんど変わらないというデータを持ち出し、35人学級には「効果がない」と決め付けています。
これはまったく根拠になりません。子どもの不登校や暴力行為には貧困や競争教育の影響などさまざまな要因・背景があり、学級人数の問題だけでとらえることはできません。しかも比較したのは導入直後のわずか2年間です。それをもって「効果がない」と結論付けるのは強引です。国に先立って少人数学級を実施した府県の調査では明確に不登校や欠席者が減ったとの結果も出ています。いじめの認知件数がやや増えたのは、むしろ学級の人数が減って教師の目が行き届くようになり、いじめが発見しやすくなった結果ではないかとの指摘もあります。「きめ細かな指導という意味で35人学級のほうが望ましい」(下村博文文科相)というのは国民共通の願いです。
財務省の持ち出したデータは40人学級に戻す結論が先にあり、都合よく見えるデータを探し出してきた疑いが濃厚です。こんなやり方は、将来に重大な禍根を残します。40人学級復活方針は撤回すべきです。
全学年で少人数学級こそ
財務省は40人学級に戻せば、教職員4000人を削減でき、86億円を減らせるとしています。目先のことしか考えない姿勢です。
日本の教育への公的支出のGDP比は経済協力開発機構(OECD)加盟国で5年連続して最下位です。段階的にOECD平均並み(約10兆円の増額)に引き上げる計画を持ち、少人数学級実施を位置づけるべきです。
欧米では学級編成の基準は20〜30人です。日本がやるべきことは、小1の35人学級の維持はもちろん、直ちに全学年に広げ、さらに30人学級へと前進することです。