2014年10月29日(水)
労働者派遣法改悪案
高橋議員の代表質問(要旨)
衆院本会議
衆院本会議で28日、日本共産党の高橋ちづ子議員が行った労働者派遣法改悪案に対する代表質問(要旨)は次の通りです。
安倍総理は所信表明演説で「大胆な規制改革なくして成長戦略の成功はありません」と述べ、雇用を医療や農業と並べて「岩盤のように固い規制」と強調しました。
日本は、1日8時間労働を定めた国際労働機関(ILO)第1号条約をはじめ、労働時間に関する18本のILO条約を批准すらしていません。総理がめざす「世界で一番企業が活動しやすい国」とは、今以上に「労働者が大切にされない国」ではありませんか。
職業安定法44条は労働者供給事業を禁止しています。中間搾取を禁止する労働基準法第6条とあいまって間接雇用を禁止し、直接雇用を原則としています。1985年の労働者派遣法制定の際、政府は、常用代替を防止するため業務や期間を限定したうえで労働者供給事業の一部を例外的に認めるものと説明してきました。こうした認識はありますか。
派遣法は1999年原則自由化、2003年製造業派遣解禁、専門26業務の期間制限廃止など規制緩和が行われてきました。民主党政権は規制強化に踏み出すかに見えましたが、自公両党の修正で骨抜きされ、2012年現行法成立時に唯一残った「直接雇用申込みみなし規定」は施行されないまま葬り去られようとしています。
「生涯派遣」に道
法案の最大の問題点は、「臨時的・一時的」という派遣労働の原則を覆すことです。
派遣元に無期雇用されていれば、期間制限をなくすといいます。派遣先の仕事がなくなれば「契約解除」という形で、紙切れ一枚で解雇されるのが本質です。
法案では専門26業務を廃止します。専門26業務の「優先雇用義務」は、3年を超えて働いていれば直接雇用で雇用の安定を図るというものでした。しかしこの規定は2012年改定で削除され、本法案にありません。専門業務といいながら一般業務と変わらない仕事をさせて期間制限を免れていた実態を追認するということですか。専門業務を区別しないなら、これまで専門業務として3年を超えて働いてきた労働者は、派遣先に優先的に雇用されるべきではありませんか。
事業所の派遣受け入れ可能期間は、過半数労働組合等からの意見聴取をすれば際限なく延長できます。労働組合がある事業所は2割未満、代わりに「過半数代表者」が選挙で選出されているのは1割にも届かず、4割近くが会社の指名や親睦会代表です。これで歯止めになるでしょうか。
派遣労働者個人の期間制限は、同じ職場で働ける期間を3年とするものの、別の課に移せば同じ派遣労働者を使うことができます。これは「常用代替」そのものであり、まさに「生涯派遣」そのものではありませんか。
労働者の選別も
総理は「派遣労働者の正社員化を含むキャリアアップを支援する」と強調しますが、配慮義務、努力義務にとどまり、実効性は期待できません。派遣先が派遣労働者の働きぶりなどの情報を派遣元に提供するとの規定が盛り込まれます。派遣先による人事評価であり、労働者を選別することも可能になるのではありませんか。正社員化どころか、有能で安上がりの派遣労働者をずっと使いたい、使用者側の身勝手な論理にほかなりません。
均等待遇原則の明記は、今回も盛り込まれませんでした。派遣制度を持つヨーロッパ諸国では均等待遇が当たり前の原則です。
総理は「女性の活躍」を叫んでいますが、やるべきことは、有期でもパートでも、女性が自らに最もふさわしい働き方を選び取れるよう、均等待遇原則、派遣先の団体交渉応諾義務など、派遣労働者の保護を強化する規定を法定化することです。
労働法制の改悪に反対する地方議会の意見書が376にも達するなど、雇用のルールを守れの声が広がっています。労働法制は人間らしい働き方を保障するための最低限のルールです。労働者に「生涯派遣」を押し付け、不安定雇用と貧困を広げる派遣法改悪案は廃案しかありません。