2014年10月28日(火)
北東アジア平和協力構想を語る
―高麗大学での講演
日本共産党幹部会委員長 志位 和夫
日本共産党の志位和夫委員長が27日、ソウルの高麗大学で行った講演「北東アジア平和協力構想を語る」は次の通りです。
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ご紹介いただきました日本共産党の志位和夫です。
まず本日、このような形で、講演の機会を与えてくださった高麗大学アジア問題研究所とハンギョレ新聞のみなさんに、また、お集まりくださったみなさんに、心からの感謝を申し上げます。
私たち日本共産党は、今年1月に開催した第26回党大会で、「北東アジア平和協力構想」の提唱をいたしました。今日は、「北東アジア平和協力構想を語る」と題して、私たちがこの「構想」を提唱した背景、「構想」の内容と意義について、お話をさせていただきます。どうか最後までよろしくお願いいたします。
日本国憲法第9条の精神に立った平和外交の戦略を
「軍事対軍事」の危険な道と決別し、平和外交の戦略を
私たちのすむ北東アジアの国ぐには、古くから相互往来の歴史と伝統をもち、今日、経済的にも文化的にも人的にも、交流と相互依存の関係が発展しています。
同時に、この地域には、北朝鮮の核兵器問題、領土に関する紛争問題、歴史問題をめぐる対立と相互不信など、さまざまな緊張と紛争の火種が存在しています。いかにしてこの地域に平和的環境を構築していくか。それは、北東アジアのすべての国ぐににとって大きな課題であることは論をまちません。
この問題にかかわって、私たちは、安倍晋三政権の対応に、強い批判を持っています。いま安倍政権は、「日本国憲法第9条のもとでは、集団的自衛権は行使できない」という戦後半世紀にわたる日本政府の憲法解釈を変更し、集団的自衛権行使容認――「海外で戦争する国」づくりの道を進んでいます。
安倍首相は、ことあるごとに「我が国を取り巻く安全保障環境が悪化している」と強調し、「抑止力」を強化するためとして、集団的自衛権行使容認を正当化しようとしています。しかし、さまざまな紛争問題に対して、もっぱら「抑止力」の強化、軍事力増強で構えたらどうなるでしょう。相手も軍事力増強を加速することになります。そうなれば、「軍事対軍事」の危険な悪循環に陥るだけです。
いま日本にとって何よりも大切なことは、こうした危険な道と決別し、どんな問題も、道理に立った外交交渉による解決、平和的解決に徹する、日本国憲法第9条の精神に立った平和外交の戦略を確立することにあると、私たちは主張しています。
対話と外交による平和構築は、多くの日本国民の願い
対話と外交による平和構築という方向は、多くの日本国民の願いでもあることを、私は、強調したいと思います。今年7月にNHKが実施した「平和観についての世論調査2014」は、興味深い結果を示しました。「日本の平和を守っていくために、今、最も重視すべきことは何か」との問いに、「武力に頼らない外交」が53・4%、「民間レベルでの経済的・文化的交流」が26・0%であったのに対して、「武力を背景にした抑止力」はわずかに9・4%にすぎませんでした。日本国民が、武力に頼らず、対話と交流による平和構築を強く求めていることは、この調査からも明らかです。
同じ調査では、「戦後、憲法9条が果たした役割を評価しますか」という問いもありますが、これに対しては、実に76・5%が「評価する」と答えています。日本国民のなかには、戦争の惨禍を経て手にした憲法9条を擁護し、恒久平和を願う強い思いが力強く脈打っていることも、みなさんにお伝えしたいことです。
ASEANが実践している地域の平和協力の取り組み
この地域には、豊かな教訓を含む、未来ある流れが起こっている
それでは、いかにして北東アジアの平和と安定を構築していくか。私たちは、その大きなヒントが、東南アジアの国ぐに―ASEAN(東南アジア諸国連合)が実践している地域の平和協力の取り組みにあると考えています。
私たちは、この間、東南アジアの国ぐにを訪問して、ASEANの取り組みをじかに見てきました。私自身、この間、インドネシア、ベトナム、カンボジアを訪問し、またアジア政党国際会議(ICAPP)に参加したさいに東南アジアの諸政党と交流し、この地域に、私たちが学ぶべき、豊かな教訓を含む、未来ある流れが起こっていることに直接接して、目をみはる思いでした。
TACを土台に重層的な平和と安全保障の枠組みがつくられている
1960年代、70年代には分断と戦争が支配していたこの地域が、いまでは平和・発展・協力の地域へと変わり、2015年にはASEAN共同体が設立されようとしています。この歴史的変化をつくりだしたのは、粘り強く協議と合意を重ね、平和的手段によって安全保障をはかる多国間の枠組みを築くための一貫した努力でした。
ASEANは、東南アジア友好協力条約(TAC)、東南アジア非核地帯条約(SEANWFZ)、ASEAN地域フォーラム(ARF)、南シナ海行動宣言(DOC)、東アジアサミット(EAS)など、重層的な平和と安全保障の枠組みをつくりあげ、それを域外にも広げています。
なかでも私たちが注目を寄せているのは、TACの重要性です。1976年に締結されたTACは、独立・主権の尊重、内政不干渉、紛争の平和解決、武力行使の放棄、効果的な協力などの基本原則を掲げ、ASEAN域内諸国の関係を律する平和の行動規範としてつくられました。87年以降は、TACはASEANとASEAN域外諸国との安全保障関係の基礎をなす国際条約として広げられました。すでにTACは、ユーラシア大陸のほぼ全域と南北アメリカ大陸にまで及ぶ57カ国に広がり、世界人口の72%が参加する巨大な流れに成長しています。
TACは、その加盟国全体に対して、強い拘束力・強制力をもつ条約ではありませんが、加盟国間の信頼を醸成し、平和の行動規範をさだめた条約として、高度の政治的重要性をもっています。TACは、ASEANがつくりあげている、さまざまな重層的な平和と安全保障の枠組みの基礎となり、土台ともなっているものです。
TACを土台としてASEANの国ぐにがつくりあげている地域の平和協力の枠組みの全体を貫いている考え方は、次のような点にあると思われます。
一つは、軍事ブロックのように外部に仮想敵を設けず、地域のすべての国を迎え入れるとともに、アジアと世界に開かれた、平和の地域共同体をつくっているということです。
二つは、軍事的手段、軍事的抑止力にもっぱら依存した安全保障という考え方から脱却し、対話と信頼醸成、紛争の平和的解決など、平和的アプローチで安全保障を追求する、「平和的安全保障」というべき新しい考え方に立っているということです。
三つは、政治・社会体制の違い、経済的な発展段階の違い、文明の違いを、互いに尊重しあい、「多様性のもとで共同の発展をはかる」という考え方を貫いていることです。
年間1000回を超える徹底した対話によって、「紛争の平和的解決」を実践
私は、昨年9月、インドネシアを訪問したさい、ジャカルタにあるASEAN本部を訪問して、次のような大変に印象深い話をうかがいました。
「ASEANでは年間1000回を超える会合をやっています。あらゆるレベルで対話と信頼醸成をはかっています。だからこの地域にもいろいろな紛争問題があるけれども戦争になりません。何でも話し合いで解決します。それを実践しています」
東南アジア域内を見ても、数多くの紛争問題は存在します。米国がこの地域で影響力を強めようという動きがあり、他方で、中国も影響力を拡大しようとしています。さまざまなあつれき、紛争も起こっています。
しかし、そのもとでも、ASEANの国ぐには、どんな大国の支配権も認めない自主的なまとまりをつくるとともに、年間1000回を超えるという徹底した対話によって、「紛争を戦争にしない」――「紛争の平和的解決」を実践しています。そして、この平和の流れをアジア・太平洋の全体に、さらに世界へと広げようとしています。私は、ここには私たちが学ぶべき未来ある流れがあると考えるものです。
日本共産党の「北東アジア平和協力構想」について
日本共産党が提唱している「北東アジア平和協力構想」は、ASEANが実践している地域の平和協力の枠組みを、北東アジアにも構築しようというものです。
もちろん、北東アジアには、東南アジアにはない複雑で困難な問題が存在しており、それらの諸問題の解決のためには、独自の取り組みが求められます。
それらも考慮に入れながら、日本共産党は、「北東アジア平和協力構想」の目標と原則として、次の四つを提案しています。
北東アジア規模の「友好協力条約」の締結を
第一は、関係諸国を律する平和のルールとして、武力の行使の放棄、紛争の平和的解決、内政不干渉、信頼醸成のための効果的な対話と協力の促進などを定める北東アジア規模の「友好協力条約」を締結することです。
私たちが、この提起で念頭においているのは、東南アジア友好協力条約(TAC)です。すでに北東アジアを構成するすべての国は、TACに加入しています。ただし、ASEAN域外の国がTACに加入した場合、TACの原則は、域外加入国とASEANとの関係には適用されますが、域外加入国同士の関係にまで適用されるものではありません。TACのような平和の行動規範を、北東アジア諸国間でも構築しようとすれば、北東アジア規模の「友好協力条約」を締結することが必要になります。
そのような条約――“北東アジア版TAC”が締結されれば、TACがASEAN諸国にもたらしたのと同じような、地域の平和と安定にとっての大きな積極的作用をもたらすことは疑いないのではないでしょうか。
北朝鮮問題を「6カ国協議」で解決し、平和と安定の枠組みに発展させる
第二は、北朝鮮問題について、「6カ国協議」の2005年9月の共同声明に立ち返り、非核の朝鮮半島をつくり、核・ミサイル・拉致・過去の清算などの諸懸案の包括的解決をはかり、この枠組みを、北東アジアの平和と安定の枠組みに発展させることです。
この問題の出発点となるのは、核兵器を保有した北朝鮮を受け入れることは絶対にできないということです。これは、国際社会の総意であり、北東アジアの国ぐにの共通した強い意志となっていることです。そうであるならば、その解決方法は対話しかありません。そしてその場は「6カ国協議」以外にありません。困難はあっても朝鮮半島非核化の基本方向を明記した2005年9月の共同声明に立ち戻る努力を続けるべきであり、協議再開のための環境をつくる努力をはかるべきです。
2005年9月の共同声明には、朝鮮半島非核化とともに、米朝、日朝の国交正常化のための方向が明示されています。さらに、共同声明に、「北東アジア地域の永続的な平和と安定のための共同の努力を約束した」と明記されていることは重要です。すなわち、この枠組みで非核の朝鮮半島の実現をはじめとした諸懸案が解決すれば、それを北東アジアの平和と安定の枠組みへと発展させる展望も示されているのです。国際社会と関係諸国は、こうした展望も視野に入れながら、この枠組みを成功させるための努力を粘り強く続けるべきだと考えるものです。
領土問題の外交的解決、紛争をエスカレートさせない行動規範を結ぶ
第三に、この地域に存在する領土に関する紛争問題の解決にあたっては、歴史的事実と国際法にもとづく冷静な外交的解決に徹することが重要です。力による現状変更、武力の行使および威嚇など、紛争をエスカレートさせる行動を厳に慎み、国際法にのっとり、友好的な協議および交渉をつうじて紛争を解決する行動規範を結ぶことをめざします。
北東アジア地域には、いくつかの領土に関する紛争問題が存在しています。日本が関わる問題としては、尖閣諸島問題(中国名・釣魚島)、竹島問題(韓国名・独島)、千島問題という三つの領土に関する紛争問題があります。
領土問題の解決そのものは、関係する二つの当事国間での冷静な外交的交渉によってはかられるべきです。同時に、領土に関する紛争をエスカレートさせないための行動規範を、当事国が受け入れ可能な形で、多国間で取り結ぶことは、北東アジアの平和と安定の確保にとって重要な意義を持つものと考えます。
私たちが、この提起で念頭においているのは、ASEANと中国による南シナ海行動宣言(DOC)から行動規範(COC)をめざす取り組みです。DOCは、領土問題それ自体の解決を直接めざすものではありませんが、それを平和的・友好的な協議および交渉をつうじて解決すること、紛争を複雑化あるいは激化させ、平和と安定に影響を与えるような行動を自制することを求めている点で積極的な意義を持つものであり、これを法的拘束力をもったCOCに発展させる努力が重要となっています。
侵略戦争と植民地支配の反省は不可欠の土台となる
第四に、北東アジアで友好と協力を発展させるうえで、日本が過去に行った侵略戦争と植民地支配の反省は不可欠の土台となります。日本軍「慰安婦」問題など未解決の問題をすみやかに解決するとともに、歴史を偽造する逆流の台頭を許しません。
この問題は、私たちの「北東アジア平和協力構想」の四つの目標と原則の全体の土台にあたる重大な問題です。北東アジアで平和と安定のための枠組みを構築するあらゆる努力の基礎となるのは信頼です。信頼がなければ、心が通う対話はできず、真の平和をつくりだすことはできません。そして信頼は、歴史の真実に正面から向き合い、誠実かつ真摯(しんし)に誤りを認め、未来への教訓とする態度をとってこそ、得ることができます。
とくに今日、首相や閣僚による靖国神社参拝、日本軍「慰安婦」問題で軍の関与と強制を認め謝罪した「河野談話」を無力化しようとする動きなど、過去の日本軍国主義による侵略戦争や植民地支配を肯定・美化する逆流――歴史を偽造する逆流の台頭を許さないことは、きわめて重要な課題となっています。
私は、9月下旬、スリランカのコロンボで行われたアジア政党国際会議(ICAPP)に出席しましたが、その機会に、スリランカの与野党のリーダーとの会談を行いました。とりわけ印象深かったのは、前首相を務めた、統一国民党のウィクラマシンハ党首との会談です。私が「北東アジア平和協力構想」について話しますと、ウィクラマシンハさんは、「構想」への賛意と同時に、「構想」がのべている歴史問題についての提起についてこう語りました。「ここはとても大切です。この問題は避けて通れない問題ですが、日本の首相は靖国神社に参拝しています。そういう姿勢では、韓国や中国との前向きな関係を築くうえでも、朝鮮半島の非核化などの諸課題の解決のうえでも、障害になるのではないでしょうか」。日本外交に対する痛烈な批判です。こうした見方が、遠くスリランカの政党のリーダーからも語られたことは、たいへん印象深いことでした。
いま「河野談話」攻撃に熱中している一部右派勢力は、「日本の名誉を回復する」といいます。しかし、「日本の名誉」を傷つけているものは誰か。歴史を偽造する勢力の側ではないか。都合の悪い歴史を隠し、改ざんすることこそ、もっとも恥ずかしいことです。そのような勢力に決して未来はありません。
日本共産党は、92年の党史を通して、侵略戦争と植民地支配に命がけで反対を貫いた党として、歴史を偽造する逆流の台頭を許さず、日本を世界とアジアから信頼され尊敬される国としていくために、あらゆる力をつくすものです。
この地域に平和と安定をもたらす現実的かつ抜本的な方策
以上が、日本共産党の「北東アジア平和協力構想」のあらましです。私は、この「構想」の方向こそ、この地域に平和と安定をもたらす最も現実的かつ抜本的な方策であると確信するものです。
日本共産党は、日米安保条約の解消を目標としており、地球的な規模でも軍事ブロックの解体を展望している党ですが、この「構想」は、この地域に、日米、米韓の軍事同盟が存在するもとで、軍事同盟に対する立場の違いはあったとしても、一致して追求しうる緊急の提案として示したものです。
この「構想」の現実性――アジアと世界の視野で考える
東アジアの政府のなかから、地域の平和協力の枠組み構築の提唱が
最後に、日本共産党の「北東アジア平和協力構想」の現実性について、三つの角度からお話ししたいと思います。
第一は、東アジアの政府のなかから、北東アジア地域に、あるいは北東アジア地域を含むさらに広大な地域に、地域の平和協力の枠組みをつくろうという提唱がなされているということです。
韓国の朴槿恵(パク・クネ)大統領は、「北東アジア平和協力構想」を提唱しています。北東アジアの国ぐにが、環境、災害、テロへの対応など、対話と協力を通じてソフトな議題から信頼を築き、次第に他の分野にまで協力の範囲を拡大していく多国間対話プロセスをスタートさせ、平和と協力のメカニズムを構築することを提起しています。この「構想」に対して、多くの国から賛同が寄せられていますが、わが党の提唱の方向とも重なり合うものであり、私は、これを歓迎し、このプロセスが進むことを心から願うものです。
インドネシア政府は、「インド・太平洋友好協力条約」の締結をよびかけ、TACのような武力行使の放棄、紛争の平和的解決などの原則にもとづいた地域の平和協力の枠組みを、インド洋と太平洋を横断する広大な地域に広げることを提唱しています。“インド・太平洋版TAC”の呼びかけです。今年8月のASEAN外相会議の共同声明では、インドネシア政府のこの提案を歓迎するとの表明がされました。
この構想は、壮大なスケールのものですが、たしかな現実的基盤をもった構想です。すでに、2011年11月に開催された東アジアサミット(EAS)において、「互恵関係のためのバリ原則」が調印されており、そこには、独立・主権の尊重、内政不干渉、紛争の平和解決、武力行使の放棄、効果的な協力など、TACが掲げている諸原則がそっくり盛り込まれているからです。EASには、ASEAN10カ国に加えて、日本、中国、韓国、米国、ロシア、インド、オーストラリア、ニュージーランドが参加しています。「バリ原則」が表明した諸原則を、法的義務をともなう条約とすることができれば、「インド・太平洋友好協力条約」が実現することになります。この構想も、わが党の「北東アジア平和協力構想」と重なり合い、響き合うものであり、それが成功することを心から願うものです。
これらの東アジアの政府の提唱にてらしてみたときに、私たちの「北東アジア平和協力構想」が実現するという希望を持ってもよいのではないでしょうか。
アジア政党国際会議――「北東アジア平和協力構想」の方向が賛同を得た
第二は、アジア政党国際会議(ICAPP)の動きです。
9月下旬にスリランカのコロンボで開催されたICAPPの第8回総会は、全会一致で採択された「コロンボ宣言」のなかで、二つの重要な課題について画期的な内容が盛り込まれました。
一つは、ASEANのような地域の平和協力の枠組みを北東アジアなど全アジア規模に広げることを提起したことです。
もう一つは、ICAPPとして、核兵器禁止条約のすみやかな交渉開始を世界に向かって呼びかけたことです。
ICAPPは、イデオロギーの違いを超え、与野党の別なく、アジアで活動する全ての政党に開かれたユニークなフォーラムとして発展してきました。
2000年にフィリピンのマニラで第1回総会が開催されて以来、2002年にタイのバンコク、2004年に中国の北京、2006年に韓国のソウル、2009年にカザフスタンのアスタナ、2010年にカンボジアのプノンペン、2012年にアゼルバイジャンのバクー、そして2014年にスリランカのコロンボと、約2年に1回の割合で総会が開かれています。日本共産党としてはバンコクの総会以来、私自身はソウルの総会以来、この国際会議に参加してきました。
今回のコロンボの総会には29カ国から75政党が参加しましたが、そのメーンテーマは「アジアの共同体の構築」でした。「コロンボ宣言」には、この問題について、次のような内容が明記されました。
「われわれは、ASEAN加盟国による友好協力条約(TAC)のような地域的な協力と統合の枠組み、南アジア地域協力連合(SAARC)、湾岸協力会議(GCC)、上海協力機構(SCO)の加盟諸国による、より緊密な一体化が、われわれの地域の他の部分でも形成され、これらが、最終的にはすべてを包摂する汎(はん)アジアレベルに適用されるというわれわれの希望を表明した」
TACのような地域の平和協力の枠組みを、アジアの「他の部分」でもつくろうということになれば、もちろん北東アジアでもつくろうということになります。「コロンボ宣言」のこの部分は、日本共産党が事前に文書で提案していたものが取り入れられたものでした。日本共産党が提唱する「北東アジア平和協力構想」の方向が、ICAPPに参加したアジアの諸政党全体の賛同を得たことは、たいへんうれしいことです。
ICAPPは政党間の会議であり、政府間の会議とは性格が異なりますが、アジアの諸政党が与野党を超えて一堂に会する国際会議で、「北東アジア平和協力構想」の方向がコンセンサスとなったことの意義は、大きいものがあると考えます。
中南米カリブ海諸国共同体(CELAC)―世界的にも普遍性をもつ
第三に、アジアから世界へと、さらに視野を広げてみたいと思います。
私たちが、この間の国際交流のなかで直接に接し、注目している動きとして、中南米カリブ海諸国共同体(CELAC)の設立があります。
中南米カリブ海地域では、1980年代、90年代のニカラグア、エルサルバドルでの内戦など武力紛争がありましたが、それらを終結させました。唯一残っているコロンビアの内戦でも、現在、和平交渉が行われています。この地域は、これらの紛争を自主的・平和的に解決する努力のなかで、地域の平和協力を急速に発展させていきました。
2010年、中南米カリブ海の33の諸国のすべてが参加して統一首脳会議が開催され、CELACの設立が宣言され、3年間のさまざまな準備と手続きの後、2013年1月に第1回首脳会議が開かれました。
今年1月に開催されたCELAC第2回首脳会議では、「平和地帯宣言」を採択し、「国際法の原則と規範及び国連憲章の原則と目的の尊重にもとづく平和地帯としての中南米カリブ海」「われわれの地域から武力の行使及び行使の威嚇を永久に放棄するための紛争の平和的解決に対するわれわれの不変の誓約」を宣言しました。
CELACが、設立時に「核兵器全面廃絶に関する特別声明」を採択し、それを第1回首脳会議であらためて確認するなど、地球的規模での平和のイニシアチブを発揮していることも、注目されます。
ラテンアメリカにおけるCELACの発展は、ASEANを中心に発展している地域の平和協力の枠組み、そして、私たちが目指す「北東アジア平和協力構想」の方向が、世界的にも普遍性をもつことを示すものだと考えます。
各国政府・政党・国民と語り合い、この「構想」を現実のものに
私たちは、この間、「北東アジア平和協力構想」を、広く日本国民に知らせる活動に取り組むとともに、各国政府と政党に働きかけ、内外の人々と対話を重ねてきました。多くの方々から歓迎の意が寄せられたことは、たいへん心強いことでした。
私たちは、東京で、東アジアの在日各国大使とも、この問題で懇談を重ねています。ある国の大使は、私たちの提案に対して、次のように答えてくれました。
「全面的に共感します。志位委員長がいわれた構想通りになれば、真の意味での北東アジアの平和と協力の枠組みとなります。だから一刻も早く、日本共産党に政権をとっていただき、ぜひこの構想を実現していただきたい」
うれしい激励です。
日本共産党は、野党であっても、東アジアの各国政府・政党・国民と語り合い、「北東アジア平和協力構想」を現実のものとするために、力をつくす決意です。さらに、私たちの野党外交の方針が、一日も早く、日本政府の外交方針になる日が訪れるように、努力するものです。
ご清聴ありがとうございました。