2014年10月27日(月)
65歳過ぎても障害福祉OKに
介護保険移行で打ち切りなんて…
仲間が支援 運動実る
愛知・一宮市 舟橋一男さん(66)
障害者が65歳になると、それまで受けていた障害福祉サービスから、介護保険に半ば強制的に移行させられます(介護保険優先原則)。運動が実り、介護保険に移行後、愛知県一宮市の舟橋一男さん(66)は、障害福祉サービスを受けることができました。(吉岡淳一)
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一男さんは脳性小児まひで車いす生活。トイレ、食事、入浴など介助なしには生活できません。発声が困難なため対話も妻の瑞枝さん(59)の通訳なしには成り立ちません。
一男さんが10月から認められたサービスは「重度訪問介護」(重訪)。重い肢体不自由などの障害者を見守る活動を含み、日常生活全体を支援します。類似のものは介護保険サービスにはありません。
週末、瑞枝さんと原発ゼロ行動に車いすで参加する一男さん。「重訪で認められるヘルパーの移動介助も活用したい。図書館にもいける」と、社会的・文化的な活動にも意欲を持ちます。
■突然の通知
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介護保険移行前は、比較的体も動かせたといいます。瑞枝さんが振り返ります。「脳性まひの2次障害が64歳から徐々にすすみ、車の乗降も私だけでは大変。生きるため、毎日がたたかいです」。舟橋さん夫妻は自宅で印刷業を営んでいますが、年収200万円未満。住民税非課税のため、障害福祉サービスの利用料自己負担分は無料ですんでいました。
2013年1月、65歳から障害福祉サービスを打ち切る通知が一宮市から届き一変。「以前は病院の往復にかかる90分間のヘルパーがついても無料でしたが、介護保険移行後は1割負担のうえ、車の乗降と病院でのトイレの10分しかみてもらえない」
窮状を知った「愛知肢体障害者こぶしの会」の支援で13年3月、愛知県と一宮市に不服審査請求を提出。こぶしの会事務局長・全国肢体障害者団体連絡協議会事務局長の渡邊覚(さとる)さんは「障害者は何歳でも同じ。『介護保険優先』の仕組み自体がおかしいことを訴えたかった」と語ります。
たび重なるやりとりで市は事務手続き上の不手際を認めたものの、介護保険優先問題は棚上げされたままでした。
■実態を調査
一男さんは要介護5認定。日に日に重くなる障害。
もう裁判しかない―。
仲間や弁護士が「支援する会」を立ち上げ提訴の準備に入ります。弁護団の森裕司弁護士らが舟橋さんの生活に密着し、本当に必要なサービスは何なのか実態調査。重訪を市に申請しました。
今年9月、ついに一宮市が重度訪問介護を認めます。10月から、月269・5時間。「介護保険では1時間でトイレ、風呂、着替えをやらざるをえなかったので湯船に1、2分しか入れなかった。重訪で5分に増えた」と、一男さんは喜びます。
渡邊事務局長は「介護保険移行後に重訪が認められたのは、私が知る限り全国で初めてでは」と評価します。
一宮市は支給理由について「個別には答えられない」と返答。
一男さんが訴えます。「消費税は8%になり、その上、介護保険の利用料の1割負担。一般障害者には蓄えなんてない。応益負担は障害者の生きることを制限します。憲法にもふれること。今の憲法があってこそ私たちは生きていけるということを声高々に言いたい」