2014年10月27日(月)
「小中一貫教育」制度化
教職員の多忙化やマンモス校化懸念
メリット薄くデメリット大
文部科学省の中央教育審議会では、小学校と中学校を統合し、9年間の義務教育を自由に改変できる「小中一貫教育」の制度化に向け、特別部会を設けて議論を進めています。“国際競争力強化のための人材育成”の一環として安倍政権が狙っているものです。部会の議論では、特にメリットもない一方、深刻なデメリットが浮き彫りになっています。
部会では、中学に進学したものの学習や生活の変化になじめない「中1ギャップ」の解消や「学力の向上」に効果があるとの意見が出されました。
しかし、「小中一貫教育」を実施する各学校(1130件)を対象に文科省が行った実態調査では、「小中一貫」のプログラムを導入しながら現行の「6・3」制を採用している学校は72%で、そのうち88%が「中1ギャップが緩和された」と回答しています。学年の区切りを変えたことで効果が表れたとは言えず、「全国学力テスト」の結果が向上したと答えた学校も42%にとどまっています。
さらに、郷土学習の推進や学校運営の一部に地域住民が参加するコミュニティースクールなど「小中一貫教育」とは無関係な取り組みまで「成果」として紹介され、委員からは「小中一貫にしなくても、教育の質を高めることができるのではないか」との指摘も出されました。
これに対し、文科省の調査では「教職員の負担感・多忙感」(85%)や「教職員間での打ち合わせ時間の確保」(82%)、「小中合同の研修時間の確保」(75%)など、教職員の負担増が大きな課題になっていることが示されました。
9月8日の部会では、東京都品川区の担当者が、区内18の小中学校を六つの「小中一貫校」に統合したことを報告しました。委員からは、「教員の目が生徒たちに行き届かなくなる」「地域に対して圧迫感があり、親しみが持てなくなる」など“マンモス校化”に対する懸念も噴出しました。