2014年10月26日(日)
きょうの潮流
群をなして飛ぶ黒々とした爆撃機。その爆音の下でうずくまり、耳をふさぐ小さな女の子―。風刺画の達人と呼ばれた漫画家、まつやま・ふみお(松山文雄)が1968年に描いた「わたしはひばりがききたい」です▼当時、日本の空からベトナムに出撃した米軍機を告発しました。戦前、プロレタリア美術運動に参加したまつやまは、何度も投獄されながら反戦を主張した反骨の人でした。戦後は35年間にわたり、本紙に政治漫画を連載しています▼権力者や社会悪を批判する漫画家の道を歩んだことについて、まつやまは「はげしい時代の歴史の熱気が生んだもの」と振り返っています。たしかに日本の風刺画は、近代国家へと突き進んだ激動のころから盛んになりました▼1862年にイギリス人によって風刺漫画雑誌が創刊。明治に入ると『団団珍聞(まるまるちんぶん)』や宮武外骨(みやたけがいこつ)の『滑稽新聞』が人気を博し、その後、新聞にも風刺漫画はひろがっていきます▼漫画史研究家の湯本豪一(こういち)さんは自著で、漫画は物事の本質を表現したものだと語っています。「ゆえに、たった1枚の漫画が、貴重な証言者として時代を雄弁に物語るのである」と▼今回の赤旗まつりでは、そのまつやまと、同じく本紙に政治漫画を描きつづけた宮下森の遺作をアート展で特別展示します。冒頭に紹介した、まつやまの「ひばり」や「落日」と題した石版画も販売されます。権力の醜さを、怒りとともに笑い、抑圧された人間の解放や平和をうたいあげた数々の作品がよみがえります。