2014年10月21日(火)
米軍基地環境協定で合意へ
地位協定は手をつけず
日米両政府は20日、在日米軍の特権を定めた日米地位協定を補足する形で、在日米軍基地の環境管理に関する新協定を締結することで実質合意しました。
米軍基地の環境管理に関し、日本側の立ち入りについての統一的な枠組みを設けることが大きな柱で、沖縄県などが求めていたものです。
沖縄県ではこれまで、基地跡地から有害物質であるPCB(ポリ塩化ビフェニール)や鉛、油脂類などがたびたび発見・検出され、土壌汚染で跡地利用に重大な支障が出ていました。
在日米軍の特権を定めた日米地位協定には日本側の環境調査を認める条項がなく、米軍が許可しない限り立ち入りはできませんでした。
新協定では、(1)有害物質の漏出など、現に発生した環境被害後の立ち入り(2)基地返還に関する現地調査のための立ち入り―についての枠組みを設ける方向です。
ただ、米軍の基地管理権を定めた日米地位協定3条にはまったく手をつけておらず、協定の実効性は未知数です。協定の合意時期についても、まったく示されていません。さらに、在日米軍基地の環境管理に関する費用を日本側が負担することまで盛り込まれており、米軍「思いやり」予算の拡大につながりかねないものです。
解説
仲井真陣営の支援狙う
今回の合意のきっかけは、昨年12月25日、沖縄県の仲井真弘多(なかいま・ひろかず)知事が同県名護市辺野古への新基地建設に向けた埋め立てを容認した「見返り」として、安倍晋三首相が日米間で交渉すると表明したものです。
知事選の告示(30日)目前の時期に「実質合意」を発表したことは、仲井真氏の3選を支援する狙いであることは明白です。
実質合意に関する報道発表文でも、辺野古への新基地建設が「普天間飛行場の継続的な使用を回避する唯一の解決策である」と再確認しています。加えて、普天間基地(沖縄県宜野湾市)に配備されている垂直離着陸機MV22オスプレイの本土への訓練拡大まで明記しています。
環境汚染が発生した場合の基地内への立ち入り権の確保は、基地を抱える自治体の共通した願いですが、“辺野古新基地やオスプレイの訓練移転が進展しなければ、基地内の立ち入りは認めない”という、どう喝まがいの対応です。
協定の具体的な内容はまったく示されていないのに、「まずは新基地を受け入れろ」というのは、ほとんど詐欺的な手法といわざるをえません。
日米両政府が基地の環境管理についてまじめに考えているのなら、無条件で基地への立ち入りに応じるべきです。 (竹下岳)