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2014年10月20日(月)

主張

リニア国交相認可

国民は着工を認めていない

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 JR東海が2027年開業をめざすリニア中央新幹線(東京・品川―名古屋)の工事実施計画を、太田昭宏国土交通相が認可しました。JR東海の計画には周辺住民や関係自治体、自然保護団体などから多くの不安と懸念の声が相次いでいました。問題だらけの計画を、ほぼ無修正で認めた国交相の責任はきわめて重大です。多くの国民は計画を認めていません。JR東海は、日本の将来に重大な禍根を残しかねない無謀な計画を、強行すべきではありません。

新たなリスク抱え込む

 リニア中央新幹線は、時速500キロで品川―名古屋を40分程度で結ぶことなどを売り物に、JR東海が建設費を「全額負担」すると推進しているものです。45年には大阪まで延伸させる計画です。

 路線の8割以上を地下トンネルで結び、自然豊かな南アルプスの直下に大穴を開けるなど日本の大型開発史上、前代未聞の超巨大計画です。膨大に排出される残土をはじめ、自然・生活環境破壊、安全、防災など深刻な問題が沿線の7都県各地で浮き彫りになり、環境省も「環境破壊は枚挙にいとまがない」と根本的な見直しを求めていました。日本自然保護協会が「日本の環境行政史上に大きな汚点を残す」と国交相認可の即時撤回を求めたのは、当然です。

 JR東海は、リニア建設によって、新幹線が災害などで不通になったときの「バイパス」になるといいます。しかし、リニアそのものが巨大地震のリスクになりかねないものです。活断層を地下で貫くことの安全性は証明されていません。トンネル内で災害にあったとき最長4キロも徒歩で避難させるやり方に不安の声は消えません。

 東京や名古屋の地下深くに建設を計画する駅の防災・安全性も不確かです。首都直下地震や南海トラフ巨大地震で大きな被害が出ると想定される地域に「新たな幹線」を追加することが、なぜバイパスになるのか。「建設先にありき」の後知恵にしかみえません。

 安倍晋三政権はリニア計画を「成長戦略」に位置づけ、海外への売り込みをもくろみますが、見通しはありません。世界の高速鉄道で、日本のリニアが導入する「超電動磁気浮上方式」技術を使っているところは現在皆無です。かつてリニア導入を検討したドイツは、安全や費用など総合的に判断して撤退したといわれています。安倍政権が本来やるべきことは、リニア売り込みでなく、なぜ世界の国ぐにがリニアから手を引いたり、足踏みしたりしているかの徹底検証ではないでしょうか。

 JR東海が負担するとしている総事業費9兆円もきわめて大きな不安要因です。同社前社長すら「リニアではペイしない」といっているように経営の重荷になることは避けられません。国費による肩代わりや国民へのツケ回しのおそれも指摘されています。

「未来の悪夢」許さず

 現在の新幹線の約3倍の電力が必要なリニアは省エネルギー社会に逆行するものです。原発再稼働をあてこんでいるなら重大です。

 JR東海は国交相認可を得たことで年明けの工事開始をめざすとしていますが、国民の不安も疑問も消えないままの暴走は許されません。「夢の乗り物」どころか「未来の悪夢」になりかねないリニア計画を止めることが必要です。


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