2014年10月12日(日)
3段階の大学入試に
全国学力テスト 高校でも
「改革」の要点
「大学入試改革」を議論している中央教育審議会の高大接続特別部会が10日、開かれ、答申とりまとめに向けた「要点の整理」を示しました。
「要点の整理」は、「高校教育として学力が確保されていない」「大学で自ら目標を持って実現していく力を身につけない学生も多い」と指摘。大学選抜試験についても、1点刻みの評価ではなく、大学で求める力を「多面的・総合的に評価する」という本来の役割を果たせるようにすることを求め、高校、大学と大学入学者選抜を一体的に改革する必要があるとしています。そのうえで高校には高校版全国学力テストともいうべき「高等学校基礎学力テスト」を新たに導入し、高校2年以降、年複数回実施することをうちだしました。
大学入学者選抜については、「知識・技能の活用力」を測るとして、現行の入試センター試験を「大学入学希望者学力評価テスト」に看板を変えて、続けることを示しました。そのうえでさらに各大学で独自の入学者選抜を行うとしています。
「基礎学力テスト」は「希望参加」とするものの、大学入学者選抜にも活用することになっており、事実上、全員参加とする可能性が強いものです。
「評価テスト」については現行の選択方式に加えて記述式を導入するとしているだけなど具体化はすべて先送りとなっています。
基礎学力テストについて「高校側が反対しており、国として一方的にやるのでは広まらないのではないか」「受験目的化する不安がある」との意見が出されました。
解説
入試にすりかえず 抜本見直しを
中央教育審議会の部会が出した「要点の整理」は、高校の序列化と競争主義をいっそうひどくしかねない危険を抱えています。
「大学入試改革」に求められるのは、高校での教育の上に大学教育が展開されるよう高校段階で学力を身につけることです。その上で、大学ごとに入学者を選抜する仕組みとするべきです。欧米諸国では、高校での学力を把握する共通テストと大学では学力試験なしの選抜を基本としています。
日本では、高校での学力把握と入学者選抜を、高校卒業直前の1回限りの入試センター試験と、それに連動した各大学の選抜試験で一括して行ってきました。ここに根本的な問題があります。
「要点の整理」ではこの枠組みは変えないまま、高校段階に新たに「基礎学力テスト」を導入し、センター試験は「大学入学希望者評価テスト」に看板を変えて続けようとしています。序列化と競争主義に拍車をかけ、生徒や学校にいっそうの負担を強いることになりかねません。
しかも、「評価テスト」では「活用力を評価する」というだけで「基礎学力テスト」や各大学での選抜とどう違うのかも不明確なまま、具体化を先送りする無責任な内容になっています。
高校教育と大学教育をどうやってつなぐのかという「高大接続」の問題を「大学入試改革」にすりかえるのではなく、あるべき「高大接続」の原則にたって抜本的な見直しを行うべきです。(深山直人)
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