2014年10月8日(水)
知ってください 盲導犬の役割
盲導犬をフォークで刺す、ペンでいたずらがきをするなどの事件が相次ぎました。盲導犬に誘導されて歩行・移動をする視覚障害者は「盲導犬の役割や重要性について理解を」と訴えています。 (岩井亜紀)
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「盲導犬は私の体の一部。盲導犬を傷つけることは、私を傷つけることです。人権を傷つけることと同じです」。全日本視覚障害者協議会代表理事の田中章治さん(69)はこう話します。
田中さんは1976年から盲導犬と暮らしています。現在のパートナー「ニコラス」は5頭目。
えさを与える、ブラッシングや排せつなど盲導犬の世話はすべて、田中さんだけが行います。家族も手を出しません。「その中で信頼関係が築けます。自宅では、あおむけになりごろごろ甘えてくることもよくあるんですよ」。一方、盲導犬はハーネス(胴輪)装着時には、仕事に専念します。
信頼
ひとを信頼するからこそ盲導犬は、視覚障害者はもちろんのこと、社会一般の人たちが危害を加えることはないと信じています。
これに対し「盲導犬は何があっても声を上げないよう訓練されている」「盲導犬は抑圧されて生活している」など誤った認識が広がることを、田中さんは危惧します。
「ペットと大きく違うのは、歩行・移動のパートナーであり体の一部だということ。10歳前後で引退すると育成団体に返す。つらいけれど労をねぎらって別れます」。そして、新たなパートナーとの訓練に入ります。
安全
盲導犬との歩行は、白杖(はくじょう)を使う場合と比較して安全性に優れています。
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盲導犬はこれらの白杖を使う山城完治さん(58)は「杖(つえ)の触る一歩さきの状況しかわからない。杖で感じた障害物を避けてもその先にある別の物にぶつかることもあります。頭上に何があるかわからないから、頭をぶつけることもしばしばです」と話します。
障害物にまで注意を払い誘導します。白杖を利用する視覚障害者の多くは駅ホームからの転落を経験していますが、盲導犬との歩行ではほとんどありません。「視覚障害者が街を歩いていたら、温かく見守ってもらえるとうれしい」と田中さんは話しています。
盲導犬の一生
生まれた子犬たちは約50日間、母犬やきょうだいと多くの時間を過ごします。この時期に「犬社会のルール」を勉強します。
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その後約1年間里親ボランティアの家庭に預けられ、人間社会での基本的なしつけを受け、愛情を注がれます。散歩や旅行などの経験を通して「人間社会のルール」を学び、人に対する信頼感を持つようになります。
生後1年前後で訓練所に戻り、適正評価を受けます。適正と判断された候補犬は、約6〜8カ月にわたり訓練を受けます。
訓練終了直前には、盲導犬を希望する視覚障害者が訓練所に宿泊し約4週間、候補犬と共同生活を送ります。候補犬は希望者のニーズに応えられるようマッチングを行います。
施設での訓練後ユーザーの自宅周辺などで訓練し、正式に「盲導犬ユーザーと盲導犬」が誕生。健康な犬でも10〜12歳程度で引退し、ボランティアの家庭に引き取られます。
(日本ライトハウス盲導犬訓練所ホームページから作成)
身体障害者補助犬法(2002年10月施行)は、良質な補助犬を育成し、身体障害者の自立と社会参加の促進に貢献することを目的とします。補助犬は、盲導犬や介助犬、聴導犬。国や地方公共団体は、補助犬が果たす役割について国民の理解を深めるよう努めなければなりません。