2014年10月4日(土)
仏軍の労組禁止は条約違反
欧州人権裁判所が判決
各国に影響も
【パリ=島崎桂】元フランス軍人が現役当時、労働組合に類する組織を設立したとして除隊になった事件に関し、欧州人権裁判所(本部・仏東部ストラスブール)は2日、軍人の労組結成を全面的に禁止することは、欧州人権条約(1953年発効)に違反するとの判決を下しました。
同条約の第11条は、集会・結社の自由を定める一方、軍人による労組結成の「制限」は認めています。今回の判決により、労組結成の「禁止」は「制限」の範囲を超えているとの司法判断が初めて示されました。
仏国防相は2日の声明で「今回の判決に留意する」と発表。「いかなる法律の変更がなされるべきか」の検討を始めると述べました。
欧州人権裁判所は欧州人権条約の実施機関であり、その判決は欧州評議会加盟47カ国に対して拘束力を持ちます。軍隊を所有する加盟42カ国のうち、35カ国は現在、自国兵に団体交渉権を認めておらず、19カ国は結社の自由も認めていません。
同裁判所は声明で、3カ月の上訴期間後に判決が確定した場合、「他の(欧州評議会)加盟国はこの判決を受け止め、その順守に進むことになるだろう」と述べました。
原告の元仏軍人マテリ氏は、現役だった2008年に「軍人の物質的、精神的状況の擁護」を掲げる市民団体「軍人と市民フォーラム」を設立。軍当局は同団体を「労働組合の性質を持った職業団体」とみなし、軍人の労組結成を禁じた国内法に違反するとしてマテリ氏らを除隊処分にしていました。