2014年10月3日(金)
山下書記局長の代表質問 参院本会議
日本共産党の山下芳生書記局長が2日の参院本会議でおこなった代表質問は次の通りです。
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被災者の緊急の要求に応え、生業被害への支援拡充も
日本共産党を代表して質問します。
はじめに、御嶽山(おんたけさん)噴火による犠牲者、負傷者のみなさまに心からの哀悼とお見舞いを申し上げます。引き続き捜索・救出に全力をあげることを求めます。
広島市での甚大な土砂災害をはじめ、この夏、全国で相次いだ集中豪雨や台風による犠牲者、被災者のみなさまにも心からの哀悼とお見舞いを申し上げます。土砂やがれきの撤去、当面の住宅の確保など緊急の要求にこたえるとともに、被災者生活再建支援法にもとづく支給限度額を少なくとも500万円に引き上げること、その対象を、浸水被害をうけた被災者、商店や小規模事業所など生業(なりわい)に被害をうけた被災者まで拡充することを求めます。
集団的自衛権行使容認の「閣議決定」撤回を
7月1日、安倍政権は、集団的自衛権行使を容認する「閣議決定」を強行しました。集団的自衛権の行使とは、日本に対する武力攻撃がなくても他国のために武力の行使をするということ、すなわち、日本が「海外で戦争する国」になるということです。
勝手な決めつけではありません。アメリカが、2001年にアフガニスタン戦争、2003年にイラク戦争を起こした際、日本は自衛隊を派兵しましたが、派兵のための特別措置法には、「武力の行使をしてはならない」「戦闘地域に行ってはならない」という「歯止め」が明記されていました。
今回の「閣議決定」では、その「歯止め」が外されました。自衛隊が活動する地域を「非戦闘地域」に限るという枠組みを廃止し、これまで「戦闘地域」とされた場所であっても支援活動ができるとされたのです。
それが何を意味するでしょうか。アフガニスタン戦争で、物資の補給や輸送など「後方支援」を当初の任務として派兵した国は数十カ国ありました。その結果どうなったか。
ドイツは、アフガニスタンから撤退するまでに55人の犠牲者を出しました。「後方支援」として開始した派兵でしたが、戦闘に巻き込まれてたくさんの犠牲者が出たのです。「戦闘地域」で軍事活動をおこなえば、相手から攻撃され犠牲者が出る。この事実をお認めになりますか。
カナダも、アフガニスタンから撤退するまでに158人の犠牲者を出しています。このうち、20代が98人、30代が45人、合わせて全体の9割を占めたと報告されています。戦争でまっさきに犠牲となるのは未来ある若者たちだということを認めますか。
「殺し殺される国」を国民は望んでいない
はっきりしました。集団的自衛権の行使とは、アメリカの戦争のために日本の若者の血を流す、「殺し殺される国」になるということにほかなりません。
私は心から訴えたい。若いみなさん、あなたは海外の戦場で血を流しますか。女性のみなさん、あなたは恋人や夫や、息子や娘たちを、海外の戦場に送り出し、「殺し殺される」ことを望みますか、と。
国民はだれもそんなことを望んではいません。
8月6日、広島で被爆者団体代表は総理に「閣議決定」の撤回を求める要望書を手渡し、次のように訴えました。
「平和記念公園の記念碑に『安らかに眠って下さい 過ちは繰返しませぬから』と刻まれている。閣議決定は碑文の誓いを破り、過ちを繰り返すものだ」
重い言葉です。しかし、総理は「平和国家の歩みは変わらない」と強弁するだけで、この訴えに真剣に向き合おうとはしませんでした。いいのでしょうか。
69年前、広島に投下された原子爆弾は、一瞬のうちに広島の街を焼きつくし、多くの尊い命を奪い、放射能によって人々をのちのちまで苦しめています。こうした原爆のむごさ、戦争の悲惨さを体験したなかから、私たちは、戦争放棄を明記した憲法9条を手にしたのです。
総理、戦後の日本の歩みの原点ともいうべき被爆者の訴えに、まっすぐ耳を傾けることこそ、被爆国の総理の務めではありませんか。被爆者が「過ちを繰り返す」と厳しく指摘している集団的自衛権行使容認の「閣議決定」は撤回すべきではありませんか。
被爆者だけではありません。どの世論調査をみても、集団的自衛権行使容認に「反対」する声は5割から6割に上ります。20代、30代では「反対」が7割に達しています(共同通信8月2、3両日実施)。若者を海外の戦場に送る政治を、若者たちが強く拒否しているのです。総理はこれをどう受け止めますか。
武力でなく外交と交流を重視した安全保障こそ国民の願い
では、国民が望む安全保障とはどういうものでしょう。NHKが7月に実施した「平和観についての世論調査」では、「日本の平和を守っていくために、今、最も重視すべきことは何か」との問いに、「武力に頼らない外交」が53・4%、「民間レベルでの経済的・文化的交流」が26・0%であったのに対し、「武力を背景にした抑止力」はわずか9・4%でした。
「日本の平和を守るために、世界に対して日本の立場をどのようにアピールしていくことが大切か」との問いには、「戦争放棄を掲げていることを世界に訴える」が27・0%、「経済などの交流によって、世界の国々との関係を強化する」が26・8%だったのに対し、「自衛のための防衛力を強化する」は12・5%にすぎません。
国民が、外交と交流を重視した安全保障を強く求めていることは明らかではありませんか。
ASEANの平和のルールを北東アジアに
外交・交流重視の安全保障は、決して理想論ではありません。
東南アジア諸国連合(ASEAN)は、1976年に東南アジア友好協力条約(TAC)を締結し、武力行使の放棄と紛争の平和解決などを掲げ、ASEAN域内諸国の関係を律する平和のルールとして機能させています。ここでは、国々の間で年間1000回を超える会合を開くなど、徹底的な対話によって信頼を醸成させています。
TACは、1987年以降、国際条約として東南アジア地域以外にも開かれ、ユーラシア大陸のほぼ全域とアメリカ大陸にまで及ぶ57カ国に広がり、世界人口の72%が参加する巨大な平和の流れとなっています。
日本もTACに調印しています。総理、東南アジアから世界に広がる地域の平和協力の枠組みから、日本が学ぶことは少なくないと思いますが、いかがですか。
日本共産党は、TACのような、あらゆる紛争を平和的に解決する枠組みを、私たちの住む北東アジアでも構築するために、次の四つの目標と原則に立った「北東アジア平和協力構想」を提唱しています。具体的には、一つ、紛争の平和解決のルールを定めた北東アジア規模の「友好協力条約」を締結すること、二つ、北朝鮮問題を「6カ国協議」で解決し、この枠組みを地域の平和と安定の枠組みに発展させること、三つ、領土問題の外交的解決をめざし、紛争をエスカレートさせない行動規範を結ぶこと、四つ、日本が過去におこなった侵略戦争と植民地支配の反省は不可欠の土台になる、ということです。この方向こそ、北東アジア地域に平和と安定をもたらす方策であり、国民が望む安全保障の方策であると考えますが、総理の見解を求めます。
米軍新基地建設は平和の流れに逆行
世界に広がる平和の流れに、真っ向からの逆流となるのが、沖縄県名護市辺野古での米軍新基地建設の強行です。
希少なジュゴンやサンゴが生息する“美(ちゅ)ら海”を埋め立ててつくる新基地は、普天間基地の単なる「移設」ではありません。1800メートル級のV字形滑走路を建設して、オスプレイを配備し、F35戦闘機を運用する。普天間基地にはない200メートル級の埠頭(ふとう)を持つ軍港を建設して、強襲揚陸艦を配備する。そして、普天間には置くことができなかった広大な弾薬搭載エリアを建設する。
このように、辺野古の新基地は、普天間の単なる「移設」ではなく、その機能を一変させる海兵隊の最新鋭出撃基地の建設にほかなりません。
これのどこが、総理のいう「負担軽減」なのですか。むしろ、沖縄の基地負担を著しく増大させ、紛争の平和解決という世界の流れにも逆行するものではありませんか。
だからこそ、沖縄県民の8割が反対しているのです。
昨年1月、沖縄県内すべての市町村の首長と議会議長、県議会議長などがサインした「建白書」を、総理は直接受け取られました。「建白書」は、米軍基地の県内移設を断念すること、米軍普天間基地を閉鎖・撤去すること、そして、オスプレイの配備を直ちにやめること―を求めています。これこそ「オール沖縄」の声であります。
新基地が押しつけられようとしている名護市民の意思も明白です。この4年半の間に、名護市では市長選挙と市議会議員選挙が2回ずつおこなわれましたが、そのすべてにおいて新基地建設反対を貫く稲嶺市長が勝利し、市長与党の市議が過半数を占める結果を出しました。
総理は、こうした沖縄の声をどう受け止めているのですか。「沖縄の方々の気持ちに寄り添う」というのなら、新基地建設は断念すべきではありませんか。答弁を求めます。
国民の暮らしと経済をどう支えるか
国民の暮らしと日本経済について質問します。アベノミクスの円安政策による物価の上昇、原材料費の高騰が、国民生活と中小企業の経営を苦しめています。その上、消費税増税が強行されました。その結果どうなったか。4〜6月期のGDP(国内総生産)は、年率換算でマイナス7・1%も落ち込みました。これは、東日本大震災による落ち込みを上回っています。とりわけ、家計消費はマイナス19・5%と、1973年のオイルショック直後に匹敵する落ち込みとなりました。
総理は「多くの企業で賃金がアップした」と繰り返しますが、それではなぜ消費がこんなに落ち込んだのですか。アベノミクスによる物価上昇とそれに続く消費税増税が賃上げ分を奪い取り、給料を目減りさせたからではありませんか。実際、働く人の実質賃金は14カ月連続で前年比マイナスとなっています。
総理は、こうした実質賃金の低下が、家計消費の落ち込みの根本にあることを認めないのですか。
10%増税を中止し、消費税増税に頼らない道を
この上、消費税を10%に引き上げたらどうなるか。さらなる実質所得の減少、消費の底割れで、日本経済の土台を崩壊させることになるのは明らかではありませんか。
そもそも、消費税増税にはひとかけらの道理もありません。「社会保障のため」といって増税しながら、医療では病床数を大幅に削減して患者を病院から追い出す、介護でも要支援者を介護保険から締め出すなど、社会保障が次々切り捨てられています。「財政健全化のため」といいながら、大企業減税と公共事業に巨額のお金をばらまこうとしています。
暮らしと経済に大打撃を与え、増税の根拠も総崩れとなっている消費税10%への増税は、きっぱり中止すべきではありませんか。
日本共産党は、消費税の増税なしに社会保障を立て直す道を提案しています。
第一は、税金は負担能力に応じてという「応能負担」の原則に立った税制改革をおこない、社会保障の財源を確保することです。富裕層と大企業への優遇税制を改めて、応分の負担を求めます。
第二は、大企業に眠っている内部留保285兆円の一部を活用して、大幅賃上げと安定した雇用を実現し、景気を回復させて、税収を増やすことです。
日本共産党は、消費税増税に頼らない“別の道”を示しながら、国民とともに、消費税増税にストップをかけるために奮闘するものであります。
派遣法大改悪をやめ、長時間労働の是正こそ
国民の暮らしと地域経済を支える重要な役割を担っている、雇用、中小企業、農業について質問します。
まず、雇用の問題です。
総理は「有効求人倍率がバブル崩壊後最高になった」といいますが、増えているのは非正規雇用の求人だけです。第2次安倍内閣成立後の1年半で、雇用者数は94万人増えましたが、内訳をみると、非正規雇用が125万人増え、正社員は逆に31万人も減っています。
にもかかわらず、総理は、労働者派遣法の大改悪案を今国会に再提出しました。これは、派遣期間は最大3年という枠をなくし、「生涯ハケン」を強いるものです。正社員から非正規雇用への置き換えも、ますます加速するでしょう。
いまでも若者の多くは、非正規雇用で、低賃金と不安定な暮らしに苦しんでいます。「結婚することができない」「子どもを産み、育てることができない」「親の老後を支えられない」という事態が広がっています。
総理は所信表明で「若者が将来に夢や希望を持てる地方の創生」と述べながら、なぜ、若者から夢と希望を奪う非正規雇用を増やそうとするのですか。派遣法の大改悪は中止すべきであります。
一方で、正社員には、「残業代ゼロ」で働かせるホワイトカラー・エグゼンプションの導入や裁量労働制の拡大が検討されています。過労死を生み出している異常な長時間労働を、さらにはびこらせるつもりですか。
いま必要なのは、労働者の命と健康を脅かし、まともな家庭生活の障害にもなっている長時間労働を是正することです。
日本共産党は、先の通常国会で継続審議となった「ブラック企業」規制法案を成立させるために力を尽くします。
赤字の中小企業への課税ではなく、最低賃金引き上げへ支援を
次に、中小企業の問題です。
日本の中小企業は企業数の99%を占め、勤労者の7割を雇用しています。地域経済や「ものづくり」技術の重要な担い手となっています。しかし、多くの中小企業は赤字です。また、円安による原材料費の値上がり、消費税増税に、多くの中小企業が苦しんでいます。一方、大企業は、史上空前の利益を上げています。トヨタ自動車の4〜6月期の営業利益は、リーマン・ショック前を上回り、過去最高を更新しています。
にもかかわらず、大企業に法人税の減税をおこなうために、その財源として、赤字の中小企業にも負担を強いる外形標準課税の拡大が検討されています。黒字の大企業の減税のために、赤字の中小企業に新たな課税をおこなう。総理、まったくの逆立ちではありませんか。
いま求められているのは、中小企業の経営の安定と、そこで働く労働者の賃上げのための支援です。アメリカでは、最低賃金を引き上げるために、2007年から5年間で8800億円規模の中小企業支援をおこないました。その結果、消費の底上げに成功し、その後も最低賃金引き上げに力を入れています。一方、日本では、最低賃金を引き上げるための中小企業支援は年間わずか30億円程度です。抜本的に増額すべきではありませんか。
米価暴落への緊急対策を、日豪EPAは国会決議違反
次に、農業の問題です。
収穫の秋に、米価の大暴落が全国の農家を襲っています。生産者が受け取る米価の目安となる概算金は、前年より60キロ当たり3000円前後下落し、史上最低の8000円ないし7000円台の銘柄が続出しています。全国平均の米の生産費1万6000円の半分以下という異常事態です。「米作って飯くえねえ」と悲痛な叫びが上がっています。「価格は市場にまかせる」という姿勢を転換し、暴落の要因となっている過剰な2013年産米を政府が買い上げるなど、緊急の価格安定策をとるよう強く求めます。
昨年まで米農家に10アール当たり1万5000円出ていた「米直接支払交付金」を、安倍政権が半減させ、4年後に廃止すると決めたことで、大規模稲作農家の方が「先の見通しが立たない」と悩み自殺するという痛ましい事態が起きています。半減措置を撤回し、農家の経営安定策をとるべきではありませんか。
4月7日に基本合意した日豪経済連携協定(EPA)は、オーストラリア産牛肉の関税を、締結後2年間で、冷凍は10%、冷蔵は7%引き下げるものとなっています。乳製品でも、たとえばナチュラルチーズの輸入を、20年間で4千トンから2万トンに増やすものとなっています。これは日本の国内の生産量に匹敵する量です。EPAは日本の畜産や酪農に大打撃になると考えないのですか。
日豪EPAの合意は、「重要農産物を関税撤廃・削減の対象から除外する」とした2006年の国会決議に違反しています。みなさん、日本の農業を守るために、国会の責任をはたそうではありませんか。また、日豪EPA以上に農業と地域を破壊する環太平洋連携協定(TPP)からの撤退を強く求めます。
再稼働推進をやめ、「原発ゼロ」の決断こそ
最後に、原発問題について質問します。
東京電力福島第1原発事故による避難中に自死に追い込まれた女性への賠償命令を下した8月の福島地裁判決が確定しました。判決は、「被告(東京電力)は、原子力発電所が仮に事故を起こせば、核燃料物質等が広範囲に飛散し、当該地域の居住者が避難を余儀なくされる可能性を予見することが可能であった。そして、避難者が様々なストレスを受け、その中にはうつ病をはじめとする精神障害を発病する者、さらには自死に至る者が出現するであろうことについても、予見することが可能であった」と述べています。
東京電力はこの判決を受け入れました。総理は、東京電力と同じ立場に立つのですか。お答えください。
加えて、今年の夏は、商業用原発が電力供給を開始した1966年以来、はじめて「稼働原発ゼロ」の夏となりました。それでも、電力が足りなくなることはありませんでした。
総理、原発再稼働・推進路線を中止し、いまこそ「原発ゼロ」への政治決断をすべきではありませんか。
安倍政権打倒の国民的大運動を
集団的自衛権、米軍基地、暮らしと経済、原発―安倍政権の政治は、どの分野でも、国民多数の願いに逆行しています。しかも、異なる意見を切り捨てる強権政治です。
安倍政権打倒の国民的大運動を起こし、国民が主人公の新しい政治を開くために、奮闘する決意を述べて質問を終わります。