2014年10月2日(木)
志位委員長の代表質問 衆院本会議
日本共産党の志位和夫委員長が1日、衆院本会議で行った代表質問は次の通りです。
私は、日本共産党を代表して、安倍総理に質問いたします。
冒頭、御嶽山(おんたけさん)噴火によって犠牲となった方々への深い哀悼とともに、被害者の方々に心からのお見舞いを申し上げます。引き続き捜索・救出に全力をあげるとともに、警戒・監視に万全をつくすことを求めます。
集団的自衛権、日本外交の進路を問う
異論を「見解の相違」と切り捨てるなら、民主政治は成り立たなくなる
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総理は、7月1日、集団的自衛権行使容認の「閣議決定」を強行しました。しかし、反対の世論は、「閣議決定」以降も広がり、どんな世論調査でも5割から6割が反対の声をあげています。
私がまずただしたいのは、こうした国民の批判に対する総理の基本姿勢の問題です。総理は、ことあるごとに「丁寧に説明を行い、国民の理解を得る努力を続ける」と言われます。しかし実際の行動はどうでしょうか。
8月の広島、長崎の平和式典にさいして、被爆者代表から「閣議決定」に対する強い批判が総理に突きつけられました。長崎の被爆者代表は、「集団的自衛権行使について私たちは納得していません」と総理に訴えました。ところが、総理は、この訴えを「見解の相違」と切り捨てたのです。
総理、このどこに「丁寧な説明」「国民の理解を得る努力」があるというのですか。ここにあるのは異論に耳を貸さない強権姿勢だけではありませんか。異論を「見解の相違」と切り捨てるなら、民主政治は成り立たなくなると考えませんか。答弁を求めます。
「海外で戦争する国」づくりこそ正体ではないか
集団的自衛権の行使とは、日本に対する武力攻撃がなくても、他国のために武力の行使をする=海外での武力行使を行うということです。
その現実的な危険がどこにあるか。2001年のアフガニスタン報復戦争、2003年のイラク侵略戦争のような戦争を、アメリカが引き起こしたさいに、従来の海外派兵法にあった「武力行使をしてはならない」「戦闘地域に行ってはならない」という二つの歯止めを外し、自衛隊が従来の「戦闘地域」といわれた地域にまで行って軍事活動を行うことになることは、わが党が国会論戦で明らかにしてきたことです。そうなれば自衛隊は攻撃対象とされ、総理は攻撃された場合には「武器の使用をする」と認めました。それは自衛隊が戦闘に参加することに他ならないではありませんか。
安倍政権がやろうとしていることは、日本の国を守ることでも、国民の命を守ることでもない。アフガン・イラク戦争のような戦争で、自衛隊が米軍と肩を並べて戦争を行う――「海外で戦争する国」づくりこそその正体ではありませんか。
日本共産党は、集団的自衛権行使容認の「閣議決定」を撤回し、その具体化のための立法作業を中止することを強く要求します。総理の答弁を求めます。
「北東アジア平和協力構想」を提唱する
私たちのすむ北東アジアには、さまざまな紛争問題があります。しかし、それに対して、もっぱら軍事で構えたらどうなるでしょう。「軍事対軍事」の悪循環に陥ってしまいます。いま日本にとって何よりも大切なことは、憲法9条に立った平和の外交戦略を確立することではないでしょうか。
日本共産党は、次の四つの目標と原則に立った「北東アジア平和協力構想」を提唱しています。
第一に、紛争の平和解決のルールを定めた北東アジア規模の「友好協力条約」を締結する。
第二に、北朝鮮問題を「6カ国協議」で解決し、この枠組みを地域の平和と安定の枠組みに発展させる。
第三に、領土問題の外交的解決をめざし、紛争をエスカレートさせない行動規範を結ぶ。
第四に、日本が過去に行った侵略戦争と植民地支配の反省は、不可欠の土台となる。
以上、4点でありますが、これは決して理想論ではありません。それは、ASEAN(東南アジア諸国連合)の国ぐにがつくっている東南アジア友好協力条約のような、紛争の平和解決の枠組みを、北東アジアにも構築しようというものであります。私は、わが党が提唱する「北東アジア平和協力構想」の方向こそ、この地域に平和と安定をもたらす最も現実的かつ抜本的方策であると確信するものです。総理の見解を求めます。
消費税大増税、日本経済のあり方を問う
家計と経済のこの深刻な事態を「想定内」というのか
次に暮らしと経済について質問します。消費税増税後の4〜6月期のGDPは、年率換算でマイナス7・1%の落ち込みとなりました。とくに、家計消費はマイナス19・5%と、この20年来で最大の落ち込みとなりました。
現在の経済状況について、総理の認識を2点うかがいたい。
一つは、なぜこれだけの家計消費の落ち込みが起きたのかという問題です。政府が言ってきた「駆け込み需要の反動」では、とても説明がつきません。その根本的要因は、働く人の実質賃金が、前年比で14カ月連続マイナスとなっていることにあります。円安による物価上昇に消費税増税が加わって、給料の目減りが続いているのです。総理は、実質賃金の低下が、家計消費落ち込みの根本的要因であることを認めますか。お答えいただきたい。
いま一つは、家計と経済のこの深刻な事態を「想定内」と考えているのかという問題です。もしも総理が、この事態を「想定内」と言い張るならば、安倍政権は、実質賃金の低下、給料の目減りを「想定」した経済政策をとっているということになります。総理、政府の「想定」を超えた事態が起きていることを率直に認め、経済政策を転換する勇気が必要ではありませんか。明確な答弁を求めます。
暮らしと経済を立て直すために――四つの緊急提案
日本経済は「好循環」どころか、悪循環の危険水域に入っています。日本共産党は、暮らしと経済を立て直すために、四つの緊急提案を行うものです。
第一は、消費税10%への増税をきっぱり中止することであります。国民の実質所得が減り続けるもとで、さらなる増税で所得を奪い取ることは、日本経済にとって自殺行為となると考えますが、いかがですか。
第二は、285兆円にまで膨れ上がった大企業の内部留保の一部を活用して、大幅賃上げと安定した雇用を増やすことです。
そのために政治がなすべきことは何か。非正規から正社員への流れをつくる雇用のルール強化、「サービス残業」の根絶と長時間過密労働の是正、「ブラック企業」の規制、中小企業への抜本的支援と一体での最低賃金の大幅引き上げなど、国民の所得を増やす政策をとるべきではありませんか。
「生涯ハケン」「正社員ゼロ」に道を開く労働者派遣法の抜本改悪、「残業代ゼロ」の労働時間規制緩和は、「使い捨て労働」「過労死」をひどくし、賃下げを促進するものであり、きっぱり中止することを強く求めるものです。
第三は、社会保障の切り捨てから充実へ、抜本的転換をはかることです。
安倍政権が、6月に決定した「骨太の方針」では、社会保障給付の「自然増」を聖域なく見直すことが明記されました。「自然増」を削るとなれば、いまの給付水準をさらに引き下げることになります。
かつて小泉内閣が進めた社会保障費の「自然増」を毎年2200億円削減する方針は、「医療崩壊」「介護難民」をつくりだし、日本の社会保障をボロボロにしてしまいました。自民党もこれを「諸悪の根源」と反省し、麻生内閣のもとでこの方針を撤回したではありませんか。それを臆面もなく復活させるつもりですか。無反省・無責任な社会保障切り捨て政策を中止し、充実へと舵(かじ)を切るべきではありませんか。
第四は、税金は負担能力に応じてという「応能負担」の原則に立った税制改革によって財源をつくりだすことです。富裕層への優遇税制のために、所得1億円を超えると税負担が軽くなるという逆転現象が生じています。大企業への優遇税制のために、法人税の実質負担率は大企業が13・9%、中小企業が24・7%とここでも逆転現象が生じています。この不公平を正す税制改革こそ、最優先の課題ではありませんか。
国民に消費税大増税を押しつけながら、大企業に減税をばらまき、その財源との口実で外形標準課税の拡大など赤字で苦しむ中小企業にも増税を強いるというのは、税のゆがみを二重三重にひどくするものであり断じて認められません。
企業から家計へと軸足を移す経済政策の転換が必要です。わが党の緊急提案に対する総理の見解を問うものです。
福島の復興と原発問題を問う
福島の願いに寄り添い、それに応える政治を――総理の基本姿勢を問う
次に福島の復興と原発問題について質問します。
原発事故から3年半が経過した今なお、福島では12万5千人を超える県民が厳しい避難生活を強いられています。福島県民の願いに寄り添い、それに応える政治が強く求められています。総理の基本姿勢を2点にしぼってうかがいます。
一つは、全会一致の県議会での決議など「オール福島」が求めている、福島第2原発を含む「県内全10基廃炉」の願いに応える意思があるかです。
総理は、昨年9月、福島第1原発の5、6号機については、東京電力に廃炉を要請しました。しかし、福島第2原発の四つの原子炉については、いまだに廃炉を要請していません。「オール福島」の願いに応えて、東電に廃炉を要請する意思があるのか否か。しかと答弁願いたい。
いま一つは、「オール福島」が求めている完全賠償の問題です。全町避難を強いられている浪江町民は、被害実態にふさわしい損害賠償を求めて、原子力損害賠償紛争解決センターに集団申し立てを行いました。それを受けて紛争解決センターは、慰謝料増額の和解案を提示しました。ところが、東京電力はその受け入れを拒否し続けています。
総理、東電の和解案拒否は、損害賠償請求を「円滑、迅速、かつ公正に」解決するために、「中立・公正な国の機関」として設けられた、原子力損害賠償紛争解決センターの存在意義を否定するものだと考えませんか。
理不尽な東電の和解案拒否に対して、沈黙を続ける政府の姿勢に、不信と怒りの訴えが寄せられています。総理、東電に対して、和解案を受け入れるよう、強く指導すべきではありませんか。明確な答弁を求めます。
新たな「安全神話」と、無責任な避難計画で再稼働強行は許されない
安倍政権は、全国の原発再稼働の突破口として、九州電力川内(せんだい)原発の再稼働を強行しようとしています。総理に2点うかがいます。
第一は、巨大噴火への備えについてです。原子力規制委員会は、巨大噴火を数年単位で予知し、予知された時点で、原子炉を止めて燃料棒を運び出すとしています。しかし規制委員会の検討会合でも、専門家から「噴火予知は無理」との意見が噴出しています。気象庁の火山噴火予知連絡会会長の藤井敏嗣東大名誉教授も「前兆現象を数年前に把握できた例は世界にない」と言っています。総理、巨大噴火が数年単位で予知できるという科学的知見がいったいどこにあるのか。具体的に提示していただきたい。
第二は、避難体制についてです。九州電力は、川内原発で過酷事故が起これば、19分後にはメルトダウンが起こり、1時間半で格納容器が壊れると認めています。ところが、内閣府が9月12日にまとめた避難計画などの「緊急時対応」には、避難に要する時間はいっさい示されていません。総理は、この避難計画を「具体的かつ合理的」と評価して「了承」したといいますが、限られた時間内に避難ができるかどうかもわからない避難計画のいったいどこが「具体的かつ合理的」なのですか。はっきりお答えいただきたい。
「噴火は予知できる」という新たな「安全神話」と、無責任な避難計画で、再稼働を強行するなどということは、断じて許されるものではありません。総理の答弁を求めます。
沖縄新基地建設――民主主義を否定するものだと考えないか
最後に、沖縄の米軍基地問題について質問いたします。
安倍政権が、抗議する県民を強制排除して、名護市辺野古(へのこ)の新基地建設を着工したことに、県民の激しい怒りが噴き出しています。
9月3日、沖縄県議会は、「まるで戦後の米軍占領時代に銃剣とブルドーザーで住民を追い出して、土地を奪った米軍のやり方と同じだ」と厳しく批判し、工事の即時中止を求める意見書を採択しました。
9月7日の名護市議選挙では、新基地建設反対の稲嶺市長を支える与党の当選者が過半数を占めました。名護市では、2010年の市長選以降、2回の市長選、2回の市議選で市民が「新基地建設反対」の意思を示しています。
さらに、県民世論調査では、実に80・2%が「新基地建設反対」と答えています。
ところが、菅官房長官は、9月10日の記者会見で、11月の沖縄県知事選挙について、辺野古の新基地建設は、「知事が承認し、粛々と工事しており、もう過去の問題だ。争点にはならない」などとのべました。この発言が大きな怒りをよんでいます。
総理、あなたもこの問題を「過去の問題」と考えているのですか。知事選で県民がどういう審判を下そうと、それにかかわりなく、あくまで新基地建設を強行するつもりですか。県民の意思を一顧だにしない姿勢は、民主主義を否定するものだと考えませんか。新基地建設は「過去の問題」ではありません。次代を担う子どもや孫に禍根を残すことはできないという、沖縄の将来が鋭く問われている問題なのです。総理の答弁を求めます。
日本共産党は、名護市辺野古への新基地建設に断固反対するとともに、普天間基地の無条件撤去、基地のない平和な沖縄をめざして、全力をつくす決意であります。
安倍政権打倒の国民的大運動を
集団的自衛権、暮らしと経済、原発、米軍基地――どの分野でも、安倍政権の政治は、国民多数の民意に背き、日本の国を亡(ほろ)ぼす、「亡国の政治」といわなければなりません。安倍政権打倒の国民的大運動を起こすため、国民とともにたたかいぬく決意を表明して、私の質問を終わります。