2014年9月26日(金)
子育て新制度 幼稚園8割移行せず
説明不十分 財源に不安
認定こども園の「認定」返上も
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来年4月から導入される子ども子育て支援新制度は、自治体で条例化が進むなか、新制度に組み込まれる予定の幼稚園の8割が新制度に移行しない考えを示すなど混乱と矛盾が広がっています。
全国の私立幼稚園(認定こども園も含む)に対する国の意向調査(7月時点)では、来年度から新制度に移行すると回答した幼稚園はわずか22・1%。幼保連携型認定こども園は85・6%が移行すると回答したものの、認定を返上して元の幼稚園などに戻ると回答したところが11・2%にも上っています(表)。保育所の抜本増設とあわせて、国が掲げる「待機児童解消」が進まない事態が危ぶまれています。
保育料決まらず
幼稚園は、秋に次年度の園児募集を行いますが、9月議会で新制度の条例化を審議している自治体が多く、ほとんどのところで新保育料額も決まっていません。そのことも移行に踏み切れない背景にあります。
保育料はこれまで園が独自に決めていましたが、新制度では「基本部分」は国が示す基準額を限度に市町村が決定します。基本保育料も分からないため保護者に説明ができないとの声が出ています。
国は、5月に公定価格(保護者負担と公費負担)の仮単価を示した際、10%程度の補助金増になると説明していました。ところが、これは消費税が10%となり4000億円分の予算が確保された場合の話だったため、移行せずにこれまで通り私学助成を受け取った方が「不安がない」と考えられていることも大きな要因です。
補助金も不透明
さらに、幼稚園や認定こども園が受けてきた地方単独の補助金の扱いも決まっていません。国は9月に入り、都道府県の私学担当者を集めて補助金の方針を「できるだけ早く示してほしい」と求めましたが、これらの施設だけに補助金を上乗せできるか不透明です。
公定価格の仮単価の試算で、認定こども園では減収となる施設が出ており、全国認定こども園協会は、認定返上とならないように国が対策を講じるよう求める緊急要望書を提出しています。
“一体化”で矛盾
今回の混乱と矛盾は、公的保育の解体と市場化を狙うなかで招いたものです。急場しのぎで幼稚園と保育所の“一体化”を進めようとしたことがさらなる矛盾を広げています。
国は、直接契約の認定こども園を推進し、待機児童解消を図りたい考えですが、幼稚園長と保育所長を一本化し「効率化」を図るなど、安上がりに済ませようとしています。国として財源を確保せず、待機児童の受け皿増設も民間まかせでは、いくら計画をたてても進まないのは当然です。
国として財源を保障するなど、公的責任を果たすとともに、関係者や保護者らに十分な合意を得ることが最低限の責任です。 (鎌塚由美)
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