2014年9月20日(土)
主張
川内原発の再稼働
「国策」押し付けが国の責任か
安倍晋三政権が全国で停止中の原発の再稼働一番手に狙う、九州電力川内(せんだい)原発1、2号機(鹿児島県)の運転開始に向けた動きが強まっています。原子力規制委員会が「新規制基準」にもとづく審査合格を決定したのに続き、政府の原子力防災会議が川内原発で事故が起きた場合の「避難」計画を了承、原発行政を担当する小渕優子経済産業相が県知事と地元の薩摩川内市長に万一の場合は政府が「責任をもって対処」するとの文書を送りました。政府が乗り出したのは自治体任せとの非難を免れるためで、再稼働という国策を押し付けるのが目的なのは明らかです。
実効性ない「避難」計画
安倍政権はこれまで、原発は「重要なベースロード電源」だとして停止中の原発の再稼働に固執し、原子力規制委が「新規制基準」で審査し合格させた原発は「安全」だからと、地元の了解が得られさえすれば再稼働を認めると繰り返してきました。「新規制基準」は自然災害や重大事故への対策が不十分なうえ、万一、東京電力福島第1原発のような過酷事故が起きても、住民を避難させる計画は審査対象にしていません。避難計画づくりは国が支援するだけで、実際には自治体任せです。
政府の原子力防災会議で了承した「避難」計画も、地元の自治体が作成した計画が基本です。国は今月から鹿児島県と薩摩川内市に職員を派遣して応援しているといいますが、ほとんど実効性の保証がない、「絵に描いた餅」です。
たとえば事故が発生した場合、まず原発から5キロメートル以内の入院患者や福祉施設の入居者をバスで避難させる計画ですが、バス確保のめどさえ立っていません。事故が拡大すれば5キロ以内だけでなく原発から30キロ以内の住民を避難させる計画ですが、20万人を超す住民をどこへ、どんな手段で避難させるかまったく決まっていません。こんな計画で「避難」計画が整ったとはとてもいえません。
にもかかわらず小渕経産相は、知事や薩摩川内市長に提出した文書で、原子力規制委の審査で「再稼働に求められる安全性が確保」されたと強弁します。住民の理解が得られるよう説明を尽くし、「万が一事故が起きた場合」には、政府が「責任をもって対処」としています。原子力規制委の審査で「安全性が確保」されたといいながら、「万が一事故が起きた場合」国の責任で対処とわざわざ断りを入れるのは、矛盾した話です。実はそれほど安全に自信がないのか、それとも電力会社の責任はいっさい問わないとでもいいたいのか。
文書は、「政府として、エネルギー基本計画に基づき、川内原子力発電所の再稼働をすすめることとする」と断言しています。まさに最初に結論ありきです。住民への説明や万一の場合政府が責任をもつという言葉も、だから「国策」に従えということに尽きます。
住民の反対の声聞け
こんな「避難」計画や口約束の「作文」で住民はだまされません。事故発生から3年半たっても拡大を続ける福島原発事故を目の当たりにして、川内でも全国でも原発の再稼働を許すな、「原発ゼロ」の実現をと世論が広がっています。
10月には川内原発周辺の自治体で、原子力規制委の説明会も開かれます。再稼働許すなの声を全国で高めようではありませんか。