2014年9月20日(土)
ビキニ環礁核実験60年
第五福竜丸以外の473隻 放射能検査 厚労省、初めて文書公開
1954年3月、アメリカが太平洋・ビキニ環礁で強行した水爆実験に第五福竜丸が遭遇したビキニ被災から60年。当時、太平洋で操業していた第五福竜丸以外の漁船の船体と乗組員にたいする放射能汚染検査の厚生省(当時)の文書が19日、「資料がない」としてきた厚労省から初めて公開されました。核実験被害者の掘り起こし活動を30年間続けてきた高知の山下正寿さん(太平洋核被災支援センター事務局長)と山本浩一さん(21世紀の水産を考える会代表幹事)が強く公開を求めていたものです。
|
被害掘り起こし活動実る
共産党も国会で追及
公開されたのは、厚労省が「省内や倉庫などから2カ月かけて探し出した」という文書、資料。304点、分厚いファイル3冊分、B4で1900枚です。第五福竜丸(乗組員23人)以外に、のべ556隻、実数473隻について、航路図、人体と水揚げした魚の放射線量などが記載されています。
資料には「白血病とビキニ被災との関連」「魚の放射能汚染に関する研究」などのほか、補償措置に関する打ち合わせや漁船ごとの検査状況などが含まれています。
当時、ビキニ環礁での水爆実験で被災した漁船はのべ1000隻とされます。厚生省は、第五福竜丸が焼津港に帰港した直後から、五つの漁港で放射能検査を実施しましたが、資料は公開していませんでした。昨年11月に、外務省の開示文書で一部が米国に提供されていたことが判明していました。
|
公開を求めてきた山下さんは、「資料があったら、なぜ公表しなかったのか。掘り起こし活動で知り合い、若くしてがんなどで亡くなった船員を思うと悔しい。国民の命と暮らしを守るべき省庁の責任放棄だ。ビキニ被災の全容解明と、被害者救済にいまからでも取り組むべきだ」と話します。
国会では、日本共産党の山原健二郎衆院議員(故人)が、1986年にビキニ被災漁民の全国調査を要請したのにたいし、厚労省は「資料はない」「第五福竜丸以外の漁船の実態はつかんでいない」と答弁していました。
被害者救済へ道筋
資料の公開に協力してきた日本共産党の紙智子参院議員の話 山原元衆院議員が国会で初めて取り上げたものの、闇に葬られようとしていた資料が、山下さんたちの粘り強い追及で60年ぶりに公表されました。長年、苦しんできた船員たちに解決の道筋を示す大事な資料です。福島が苦しむ原発事故による海洋汚染、放射線被ばく問題を解明し、その教訓を生かしていくうえでも、今回の資料公開は大きな意味があります。