2014年9月3日(水)
主張
来年度の概算要求
消費税増税が節度を破壊した
来年度(2015年度)予算の概算要求が各省庁から出そろい、財務省は本格的な査定作業を開始します。一般会計予算の要求額は総額で101兆7000億円程度と過去最大に達し、「成長戦略」や「地方創生」を掲げた4兆円程度の特別枠もほぼ満杯です。安倍晋三政権は来年度予算の概算要求にあたって、上限を設けていません。来年10月からの消費税増税の実施が決まっていないなどが理由ですが、すでに今年4月からの消費税増税が財源を膨らませており、消費税増税が財政節度を破壊しているのは明らかです。
軒並み大幅増の要求
国土交通省は公共事業の拡大などで今年度予算より16%増の6兆6870億円、防衛省は新しい装備の購入などで過去最大の5兆545億円、経済産業省は民間投資の促進などのため22%増の1兆7470億円―。各省庁の概算要求は軒並み大幅増額です。厚生労働省の概算要求は31兆6688億円ですが、高齢化などによる「自然増」8155億円を含みます。社会保障予算の概算要求にあたって安倍政権は、自然増についても「聖域なく見直し、効率化・適正化」するよう迫りました。
今年4月から税率が5%から8%に引き上げられた消費税は、来年度は丸まる税収を増加させます。それに加えて来年度は10月から消費税の税率がさらに10%に引き上げられる予定のため、半年分の増税分を加えれば、消費税の税収は合計10兆円近く膨らむ計算です。増税で増える税収に各省庁が群がり、概算要求を拡大させているのは明らかです。
安倍政権は7月末に決めた概算要求基準で、来年10月からの消費税増税の実施を決めるのが年末になることを理由に、上限額を決めませんでした。それに加えて「成長戦略」などを口実に、4兆円の特別枠も設けました。100兆円を超えた要求を査定で削るといっても、それこそ絵に描いた餅のような話にしかなりません。
概算要求は消費税増税に便乗したといわれても仕方がないものが目立ちます。国土交通省の概算要求のうち9割は公共事業関係費ですが、そのなかには「国際競争力の強化」を掲げた首都圏空港や国際コンテナ戦略港湾の整備など、大企業本位の大型開発が盛りだくさんです。「特別枠」として概算要求に盛り込まれたものも、従来型の事業の看板を架け替えただけのものが並びます。
安倍政権になって来年度で3年連続の増額につながる軍事費についての防衛省の概算要求も、垂直離着陸機オスプレイや水陸両用車、無人偵察機など、新兵器の購入が目白押しです。まとめて買ったほうが安いと、P1哨戒機を一度に20機も購入するありさまです。
福祉・財政に役立たぬ
異常な財政危機のなかで、文字通り消費税増税へ悪乗りしたとしかいいようのないこうした概算要求は、消費税増税分は社会保障の充実にあてるとしてきた政府や政権与党の言い分のごまかしを証明するものです。安倍政権は消費税増税の一方で、来年度から大企業向けの法人税の減税をたくらんでいますが、それも消費税増税の本質を浮き彫りにしています。
消費税増税が福祉の向上にも財政再建にも結びつかないのは明白です。増税は中止すべきです。