2014年8月26日(火)
道徳教育を押し付け
中教審 検定教科書、評価も
中央教育審議会の道徳教育専門部会は25日、道徳の時間を「特別の教科」として位置づけ、検定教科書の導入などを盛り込んだ、審議まとめ案を示しました。
まとめ案では、道徳教育は「国家・社会の持続的発展を根底で支えるもの」であるとして「学校教育の中核」だと強調しました。
道徳教育は「特別の教科」として義務付けるとともに、「検定教科書」を導入。評価について「数値による評価は行わない」としながらも、指導要録に記述式の記録欄を設けて評価を行うことを打ち出しました。
道徳教育の目標については、「道徳的な信条を涵養(かんよう)する」としてきた従来の姿勢を転換し、「内面的な充実を図り、道徳実践につながることをめざす」と強調しました。
内容についても「人間の弱さと困難に立ち向かう強さ」「社会を構成する一員としての規範意識、法などルール」などを強調。「正直、誠実」「公平、公正、正義」など特定の価値観を例示しました。一方で、「他者との共生」をかかげるものの、憲法が定める基本的人権や市民道徳的な内容はほとんど盛り込まれていません。
まとめ案は、各学校では「道徳教育の全体計画」を策定し、校長によるリーダーシップと「道徳教育推進教師」を中心に、全教員が分担して全校あげて「計画」の推進を求めています。
「道徳の時間」を現在設けていない幼稚園、高校、特別支援学校でも道徳教育導入の検討を求めています。
道徳教科化 国が特定価値観を強制
中央教育審議会道徳教育専門部会が25日に審議まとめで打ち出した「道徳の教科化」は、安倍内閣がねらう「戦争する国」と「企業が世界一活動しやすい国」に向けて、国家が国民の内心にまで踏み込み支配しようとする危険なものです。
戦前の道徳教育は、「教育勅語」で定めた軍国主義国家の「道徳」を「修身」と称して教え込みました。戦後はその反省から、憲法に「思想良心の自由」を定め、道徳の教育は特定の教科ではなく、教育活動全体を通じて行うとされました。
市民道徳の教育が重要なことはいうまでもありません。しかし、国民が主権者となった民主主義社会にふさわしい道徳は、国家が押し付けるものではなく、国民みんなで考え、一人ひとりが主体的に選び取っていくものでなければなりません。ところが安倍内閣は道徳を「教科」に位置づけて「検定教科書」を導入、「評価」も行って特定の価値観を国が押し付ける体制を確立しようというのです。
安倍内閣は昨年策定した「国家安全保障戦略」で、日米同盟強化のために「我が国と郷土を愛する心を養う」と明記し、侵略戦争美化に向けて教科書検定基準を改悪しました。「道徳の教科化」も、ゆがんだ愛国心に基づく国家主義的な道徳教育推進がねらいであることは明りょうです。
すでに安倍内閣は、「私たちの道徳」という教材を作成し、使用を求めています。下村博文文科相は、家庭に持ち帰って学ぶよう求め、持ち帰りをチェックせよとまで主張しています。憲法と民主教育の根本原理を無視した教科化によって、歴史を逆戻りさせることは許されません。
同時に、中教審部会の審議まとめでは、「特定の価値観を押し付けるものではない」「一律の基準を当てはめて評価することは適切でない」と言い訳していることは重要です。国民の批判を無視できなくなっている表れです。ゆがんだ道徳教育の押し付けを許さず、子どもたちの成長を支える道徳教育こそ必要です。(深山直人)