2014年8月25日(月)
主張
東電汚染水対策
政府の責任で英知集めてこそ
重大事故を起こした東京電力福島第1原発で放射性物質によって汚染された水が大量にたまり一部が外部にも流出して汚染を拡大させている問題は、いよいよ東京電力だけでは手に負えないことが浮き彫りになっています。東電が急いでいるのは建屋から海側に延びる地下トンネル(トレンチ)にたまった高濃度の汚染水を抜き取るため建屋とトレンチの接合部を凍らせふさぐことですが、4月から始めた工事がうまくいっていません。安倍晋三政権は汚染水対策を東電任せにせず「国が前面に出て、必要な対策を実行」としてきましたが、その実行が問われています。
重大な放射性物質の流出
汚染水問題は昨年夏、汚染水をためていたタンクから大量の水が外部に流出、海にも広がったと見られ、新たな放射性物質の流出事故だと国際的にも大問題になりました。政府もあわてて閣僚会議を開いて、国が「前面」に出ると決めましたが、閣僚会議は昨年9月に第1回会合を開いただけです。汚染水問題が大問題になっているさなかの昨年9月には、安倍首相が東京オリンピックの招致に絡んで汚染水は「コントロールされている」と発言、危機感の薄さがきびしく批判されました。
福島第1原発には山側から毎日400トンの地下水が流れ込みます。その地下水が原子炉建屋のなかで放射性物質によって汚染された水と混ざり合ったのが汚染水です。東電は汚染水をくみ出しタンクにためてきましたが、大量にたまり続ける汚染水はタンクを林立させても間に合わず、昨年の汚染水漏れ事故のように、事故やトラブルはあとを絶ちません。
深刻なのは建屋から延びるトレンチで、巨大なトンネルの中には1万1000トンもの高濃度の汚染水がたまっています。トレンチは外部とつながっているので、これまでも隙間などから高濃度の汚染水が漏れ出した可能性が指摘されてきました。建屋とトレンチの接合部をふさぎ、汚染水をくみ出すことが急がれています。政府と東電は事故を起こした原子炉を地下まで凍らせた凍土壁で取り囲み、地下水の流入を防ぐことを計画していますが、凍土壁はトレンチを横断するため、トレンチを閉鎖しなければ凍土壁の計画も実行できないことになります。
トレンチの建屋との接合部を凍らせる工事は4月から始まったのに、いまだに完成していません。完全に凍らないため、東電は7月から大量の氷やドライアイスを投入しましたがそれでも凍らず、今度はセメントなどを投入して隙間を埋めるといいだしています。しかし、セメントは固まるとき熱を出すため、凍結への影響も懸念されます。原子力規制委の専門家からは「まるで泥縄」の声も出るほど、難航に難航を重ねているのです。
失敗続きの東電任せ限界
トレンチの遮水がうまく行かず外部への流出が続き、凍土壁で地下水の流入をとめるという計画も始まらないとなれば、汚染水対策はいよいよ見通しがたたなくなります。東電任せはもはや限界です。
国が「前面」に出るといいながら事実上東電任せを続けた安倍政権と、外部からの批判には耳を貸さず秘密主義でことをすすめている東電の責任は重大です。文字通り国の責任で、あらゆる英知を総結集する対策が求められます。