「しんぶん赤旗」
日本共産党
メール

申し込み記者募集・見学会主張とコラム電話相談キーワードPRグッズ
日本共産党しんぶん赤旗前頁に戻る

2014年8月24日(日)

フェアプレーの風

ネイマールとスニガ 骨折から1カ月半

わだかまり解かす“挑戦状”

このエントリーをはてなブックマークに追加 Yahoo!ブックマークに登録 mixiチェック

 気になる2人のちょっといい話です。

 サッカーワールドカップ(W杯)ブラジル大会準々決勝で腰椎(ようつい)骨折をしたブラジル代表のFWネイマール選手と、けがを負わせたコロンビア代表のDFフアン・スニガ選手です。

難病支援で交流

 いま世界に広がっている「アイスバケットチャレンジ」がその舞台でした。これは難病の筋萎縮性側索硬化症(ALS)を世に広め、寄付を募る支援運動です。知人から指名を受けて、賛同する場合は、「氷水をかぶるか、ALSへ寄付するか」。両方を選択してもいい。氷水をかぶった場合、その様子をSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)に投稿し、次の人を指名するというものです。

 ブラジル代表のチームメートから指名を受けたネイマールは17日、氷をかぶると同時に、スニガ選手を指名したのです。

 スニガ選手は翌18日、「ネイマール、君からの挑戦を受けるよ」との一文とともに、笑顔をみせ、豪快に氷水をかぶりました。

 あの大けがでネイマール選手はW杯の欠場を余儀なくされました。チームを優勝に導く夢がかなわなかったばかりか、骨折の場所があと数センチずれていたら、車いす生活になる危険なけがでもありました。

 試合の翌日、スニガ選手はSNSでネイマール選手に謝罪しています。

 「今回、僕に悪意や故意の気持ちはなかった」「僕はネイマールに謝罪をしたい。僕は君のことを尊敬していたし、世界最高の選手の一人だと思っている。早く復帰できることを願っている」

 ネイマール選手もその後の会見で「僕は彼の謝罪を受け入れる」と口にしました。ただ、心の整理がつかない彼の表情は、まだ失望感を漂わせ、硬いままだったのです。

 けがのショック、W杯に出場できない悔しさ…。いろんな思いから、本心はどうだったか。すぐに許す気持ちになれなかったとしても、それはある意味、当然かもしれません。

どちらも苦しく

 しかし、あれから1カ月半。時が心身の傷を癒やしてくれました。新たな目標を胸にピッチに戻ってきたネイマール選手。同時に、彼はスニガ選手も苦しい思いでいたことを気にかけていたのです。

 スニガ選手はけがを負わせたことで、世界中から責められ、苦しい立場にいました。ブラジルのマフィアから狙われているとの報道まであったほどです。

 ネイマール選手の送った“粋な挑戦状”は、スニガ選手にとってどれほどうれしいものだったか。それだけではありません。これは「2人の間にわだかまりはないよ」という世界へのメッセージにもなりました。

 同じ競技をたたかうもの同士がいがみあい、憎みあうことは、悲しいことです。スポーツはそれを通じて、互いに心を通いあわせることが、本来の姿です。だからこそ憎しみを生むようなアンフェアな態度、悪意あるプレーがあってはならないのは当然のことです。

 試合中の大けがという不幸な出来事を憎しみにせず、水に流し“氷解”させた2人。とくに、ネイマール選手の行動には、サッカーを愛するものにたいする、深い思いやりを感じるのです。(和泉民郎)


見本紙 購読 ページの上にもどる
日本共産党 (c)日本共産党中央委員会 ご利用にあたって