2014年8月24日(日)
モスク襲撃
シーア派民兵 スンニ派73人殺害
イラク新政府影響も
【カイロ=小泉大介】イラクの首都バグダッド北東のディヤラ州で22日、イスラム教シーア派の民兵がスンニ派のモスク(礼拝所)を襲撃し、礼拝中の信者が少なくとも73人死亡しました。中東の衛星テレビ・アルジャジーラが伝えました。スンニ派の過激派「イスラム国」の攻勢の中で、シーア派によるスンニ派住民殺害が発生したことで宗派対立が深刻化するおそれがあり、現在続けられている「挙国一致政府」の樹立に向けた作業への否定的影響が懸念されます。
襲撃事件が起きたのはディヤラ州バニワイスで、当時は金曜礼拝のため約150人のスンニ派住民がモスクに集まっていました。目撃者は「シーア派民兵はモスクに乗り込み無差別に発砲した。これは大虐殺だ」と語りました。
シーア派優遇政策を推進し「宗派対立」激化をもたらしたマリキ首相に代わり、11日に新首相候補に指名されたアバディ氏は、「民間人の殺害を強く非難する。国民同士の対立を扇動する策動は拒絶しなければならない」と声明し、挙国一致の必要性を訴えました。
しかし、連邦議会(国会)のスンニ派政治勢力は22日、首相候補指名から30日以内の組閣に向けてアバディ氏と行ってきた協議を中断すると表明。モスクを襲撃した犯人の逮捕と犠牲者家族への補償を強く要求しました。
イラクでは8日以降、米軍が北部でスンニ派過激派組織「イスラム国」を標的にした空爆を継続。空爆は22日までに計93回に達しています。イラクの識者などからは、シーア派が支配する政府と軍に加担する形で米が空爆を実施することは、「挙国一致政府」樹立の妨げになるとの指摘が当初から出ていました。