2014年8月24日(日)
米ミズーリ黒人射殺 抗議の裏に
根強い人種差別 警察官9割白人 捜査対象9割黒人
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【ワシントン=島田峰隆】米中西部ミズーリ州ファーガソンでの白人警官による黒人青年射殺事件に端を発した抗議デモは、事件発生から2週間近くたってようやく落ち着きを見せ始めています。しかし今回の抗議行動の広がりは、米国社会に根強く残る黒人に対する人種差別の問題を浮き彫りにしました。
デモ隊と警官隊の衝突が深刻化する中、オバマ大統領の指示でホルダー司法長官が20日に現地を訪問。被害者遺族や地域の有力者らと会い、21日には「事件の真相の徹底的で公平な調査」を約束しました。
これを受けて衝突は収束に向かいましたが、これまでに合計で少なくとも161人が拘束されました。
今回の混乱の背景には、重武装の警官隊がデモ隊を無理やり鎮圧しようとした対応のまずさに加えて、黒人への差別や偏見が社会の底流にいまだに広く残されていることがあると指摘されています。
ファーガソンの人口約2万1千人の6割以上が黒人。他方、地元警察職員の9割以上は白人です。州司法当局によると同市では昨年、警察による捜査の92%、逮捕の93%が黒人を対象に行われました。さらに、同市の警官がこれまでも黒人住民に繰り返し不当行為を働いていた疑惑が浮上しています。
11年にも銃撃
米メディアによると、2011年には通りで大声を出していた丸腰の黒人男性が制止命令を聞かなかったとして警官に銃撃されました。警官は倒れた男性が立ち上がろうとするところをさらに撃ち、男性は死亡。遺族によると男性は精神障害を持っており、遺族は今月19日に警察を相手取って裁判を起こしました。最近は警察の対応を問う同様の裁判が相次いで起こされています。
政府統計によると、07〜12年の全米の黒人青年層の失業率は35%程度で白人青年と比べて倍の高さです。世界経済危機後の09年には49%でした。
差別克服課題
ニューヨーク・タイムズ紙のコラムニスト、チャールズ・ブロウ氏は「ファーガソンが示したのは、経済、教育、司法において人種で線引きされている不公平な制度が固定化していることへの不満だ」と指摘しました。
米国史上初の黒人大統領であるオバマ氏にとって黒人の地位向上は重要課題です。同氏は7月、有色人種の青年の就学や就職を促進するプログラムの拡充を発表。「これは1回限りでなく、来年、5年後、10年後へ向けて構築する運動だ」と語り、時間はかかっても差別や人種間の格差を克服する重要性を訴えました。